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2009.07.10

二度生きたランベルト

20090627_008 抜群なユーモアと奇想、皮肉もしっかり込められていて、シュールな展開はたまらなく魅力的だ。イタリアン・ファンタジーの最高傑作という帯どおり、シュールレアスティックなファンタジーであり、スリリングな冒険譚でもあり、作者の茶目っ気とアイロニカルな諷刺精神がピリッと効いたユーモア小説でもあり、老いや死をテーマにした物語でもある。非現実的な世界と卑近な事例にもとづく現実の世界とが入り乱れ、不思議な魅力を醸し出している、ジャンニ・ロダーリ著、白崎容子訳『二度生きたランベルト』(平凡社)。タイトルからしてユニークなのだが、各章ごとに著者の覚え書きなるものがついていて、物語作りの舞台の裏側を垣間見せてくれるサービス精神たっぷりの一冊でもあるのだ。

 イタリア北部、オルタ湖の中にサン・ジュリオ島があり、そこには御歳93歳になる男爵ランベルト氏が住んでいる。世界中に24の銀行を持つ大富豪だが、歳には勝てずに身体のいたるところに24の病気の症状を抱えている。唯一の身内である甥のオッタヴィオは、そんなランベルト男爵の遺産を狙っているが、予想に反して、この頃の男爵はやたらと元気に若返っている様子。オッタヴィオはランベルト男爵を亡き者にしようと企むが、ある日ランベルト男爵の屋敷に24人もの“二十四ラ団”なる強盗団が侵入し、島ごと占拠されてしまう。ランベルト男爵を人質に身代金を要求するものの、うまくゆかない。何しろ、エジプト旅行の際にアラブの隠者に教わった健康法が効いて、不死身になっていたのだから。

 まえがきに詳しく書かれているとおり、この物語はエジプトの宗教について書かれた書物の中の言葉“名前を呼べば命は不滅”という言葉が発端になっている。この言葉を信じたランベルト男爵と忠実な召使いのアンセルモは、6名の人物を雇い、理由を打ち明けずに法外な給料を出して交代で毎日“ランベルト”と名前を連呼させているのだった。そんな男爵の秘密を探り当てたオッタヴィオは、混乱のどさくさにまぎれて、男爵の殺害を計画するのだったが…という物語。男爵は、名前を呼ばれ続けることで死を遠ざけて、しまいにはもう一度生きなおす。これは自然の摂理には背いた行為であり、物語の中だからこそ成り立つものと言っていい。ハチャメチャなところも、イタリアらしくて愉快である。

 この物語の著者であるジャンニ・ロダーリは、作品を書く場合に「作家のエゴを通して作品を書くよりも、読者の声を反映させたほうが面白い作品になる」というような独特の方法論を持っている様子。この物語にもその考え方が用いられ、読者の意見を反映しながら書かれている。どんな風に作品を練ったのかは巻末にまとめられた覚え書きで読むことができるのだが、これがまた面白い。素朴な子どもたちの意見に真摯に応えて、結末をどんなふうにも解釈できるようにうまくまとめ上げている。本としては児童書にあたるこの物語だが、大人だからこそ味わえる楽しみもあるとわたしは思う。この抜群のユーモアと奇想、皮肉が込められたシュールな物語を、多くの人に読んで欲しい、と心から言いたい。

4582829570二度生きたランベルト
Gianni Rodari 白崎 容子
平凡社 2001-05

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 ≪ジャンニ・ロダーリの本に関する過去記事≫
 ・『パパの電話を待ちながら』(2009-05-01)


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