« ゴールド・フィッシュ | トップページ | 二度生きたランベルト »

2009.07.07

カナリア王子 イタリアのむかしばなし

20090624_016 イタリアは“民話の宝庫”と呼ばれているらしい。そんなイタリア全土を旅しながら民話を収集して再話した、イタリアを代表する作家イタロ・カルヴィーノ。200もの民話の中から、恐ろしくも美しくもある7つのお話を収録したのが、イタロ・カルヴィーノ再話、安藤美紀夫訳、安野光雅画による『カナリア王子 イタリアのむかしばなし』(福音館文庫)。本書では、表題作「カナリア王子」と「とりごやの中の王子さま」、「太陽のむすめ」、「金のたまごをうむカニ」、「ナシといっしょに売られた子」、「サルの宮殿」、「リオンブルーノ」という、選りすぐりの7つお話が楽しめる。とりわけ安野光雅による画が、シュールで奇想的なお話の展開に豊かな彩りを持たせ、とても贅沢な気持ちになる。

 表題作「カナリア王子」では、継母の陰謀によって森の城の塔に閉じ込められてしまった姫と、森の向こうを通りがかったとき姫をみそめた王子の話である。囚われの姫と姫に恋する王子ふたりの身振り手振りのやりとりに見かねた魔法使いが、魔力を持つ古本を与えて、ふたりの仲を取り持ってくれる。魔法のページを前からめくると王子がカナリアに変わり、後ろからめくるとカナリアから人に変わるという。けれど、そこはお話のお約束とも言うべきか、姫の継母が悪巧みをしかけてくるのである。人が鳥へ、鳥からひとへ…という、美しいイメージだけでは終わらない、魅力的なお話。ストーリー展開が素朴で設定が大雑把なところもまた、民話らしい味わい深さを感じる気がする。

 他に印象的だったのは、「太陽のむすめ」。こちらでは、ある王と王女が長い間の念願だった姫を授かることになるのだが、その姫が20歳のとき“太陽のむすめ”を生むことになるだろうと星占い師に予言される。心配になった両親は塔に閉じ込めるものの、予言どおりになってしまうのだった。王の怒りを恐れた乳母は、太陽のむすめを畑に置き去りにして、そのむすめはやがて、通りかかった他国の王によって息子と一緒に育てられることに。その後、むすめは宮殿から追い出されるものの、太陽のむすめにふさわしい超人的な力を発揮して、自分の望みを叶えるというお話。太陽のむすめと王子の花嫁との知恵比べというか、女のプライドをかけた競い合いが残酷ながら面白く読めるお話だ。

 その他の「とりごやの中の王子さま」「金のたまごをうむカニ」「ナシといっしょに売られた子」「サルの宮殿」「リオンブルーノ」もそれぞれに味わい深い。設定がバラエティ豊かで、厭きさせずにぐいぐい読ませるのだ。魔女や魔法が、人と共にあたり前に存在する世界にもとても惹かれるし、機転を利かせて大らかさとほんの少しの運で幸せをつかむ人たちにも好感が持てる。これがイタリア人の気質や文化なのだろうか…と思うと、とても感慨深いものがある。また、ほんのり毒を含ませながら強引に展開してゆく物語を、読み手にまるごと受け入れさせる力があると思う。明るい語り口がそうさせるのか。それとも、長い間語り継がれてきた重みなのか。むかしばなしはなかなか侮れない。

4834023885カナリア王子―イタリアのむかしばなし (福音館文庫)
安野 光雅 Italo Calvino 安藤 美紀夫
福音館書店 2008-10

by G-Tools

人気ブログランキングへ
本ブログ 書評・レビュー←宜しければクリックお願い致します。

|

« ゴールド・フィッシュ | トップページ | 二度生きたランベルト »

61 海外作家の本(イタリア)」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55029/45561709

この記事へのトラックバック一覧です: カナリア王子 イタリアのむかしばなし:

« ゴールド・フィッシュ | トップページ | 二度生きたランベルト »