« f植物園の巣穴 | トップページ | 霊降ろし »

2009.05.30

まるまれアルマジロ! 卵からはじまる5つの話

20090529_053 自分の幸せは自分自身で決める。そう意識した傍から確実に何かは変わっている。意識するとしないとでは大違い。日常のささやかなひとこまだって、色を変えてわたしたちに微笑みを返す。小さな出来事のひとつひとつの積み重ねが、わたしを豊かにしてゆくのである。安東みきえ著、下和田サチヨ絵『まるまれアルマジロ! 卵からはじまる5つの話』(理論社)には、そんな微笑みを誘う5つの物語が収録されている。どれも当たり前ながら、日常生活の中では忘れがちな大切なこと。それに気づかせてくれる動物たちの日々が、やわらかな筆致で描かれてゆく。また、コラージュのような絵も味わい深く、物語に彩りを添えている。見事なコラボーレーションの一冊である。

 いずれも“卵があった…”ではじまる物語。「オケラのお月見」では、博識だけれど気の弱いオケラのケラ一家のお月見の様子が描かれる。満月を見ようと地中から地上へときたのだけれど…。「オオカミの大きなかんちがい」では、オオカミを慕う小鳥とのコミカルなやりとりが描かれる。なんとも愉快な物語である。「ハゲタカの星」では、ハゲタカであることを恥じ入るヒナ鳥が、その鳥の自然の中での役割を確かにする。「まるまれアルマジロ!」では、ダチョウのために卵のふりをするアルマジロの姿が描かれる。その健気な姿にほろりとくる。「心配性のコウノトリ」では、天使に選ばれたコウノトリが子どもを届けるべくしてあれこれ悩み、難癖をつけたりして思いあぐねる物語である。

 中でも印象的だったのは、「ハゲタカの星」。卵のカラをやぶって世の中に出てゆくべきかどうか悩むヒナは、立派で気高い父親を想像して、美しい世界を見たいと外の世界に出た矢先に、父親の姿に愕然となる。いつもおどおどとしているように見える卑屈な姿勢に。死んだものを食らうその姿に。そして、同じタカの仲間にも死んだものを食べることを馬鹿にされる始末。“ぼくと父さんは違う”そう決心することで、ヒナは成長する。けれど、ハイエナのじいさんと出会ったとき、本当の誇りとは何かを見出すのである。“みんなからどんなふうに思われたってかまうことはない。自分がきめたひとつの星に恥ずかしくないように生きていけりゃそれでいいんだ”と。あたたかみのある言葉である。

 自分で決めたひとつの星。それは紛れもなく、自分自身の道筋。後悔のないように、精一杯その道を歩めたのならば、言うことはない。オオカミを慕うあまりに自分を見失っていた小鳥も、卵でいることで自分の親探しから逃れようとしたアルマジロも、あれこれ悩んで葛藤して、己が道を歩んでゆく。自分自身の道筋は、ふとした先に目の前にあり、それに気づいたときにはもう、わたしたちは歩き出している。そうして、自分の幸せは自分自身で決める。そう意識した傍から確実に何かは変わっている。意識するとしないとでは大違い。日常のささやかなひとこまだって、色を変えてわたしたちに微笑みを返す。小さな出来事のひとつひとつの積み重ねが、わたしを豊かにしてゆくのだろう。

4652079478まるまれアルマジロ!―卵からはじまる5つの話
下和田 サチヨ
理論社 2009-03

by G-Tools

≪安東みきえの本に関する過去記事≫
 ・『頭のうちどころが悪かった熊の話』(2008-03-10)

人気ブログランキングへ
本ブログ 書評・レビュー←宜しければクリックお願い致します。

|

« f植物園の巣穴 | トップページ | 霊降ろし »

74 その他の本」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55029/45173998

この記事へのトラックバック一覧です: まるまれアルマジロ! 卵からはじまる5つの話:

« f植物園の巣穴 | トップページ | 霊降ろし »