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2008.12.11

わたしとおなか

20081124_010jpg_effected 今のままじゃ、今のまんま。そんなフレーズが脳裏をかけめぐったわたしの学生時代。このままじゃいけない。変わらなくちゃいけない。そう駆り立てたものが何であるのかさえわからないまま、とにかく今を変えなくちゃならないと思っていた。けれど、わたしがありのままのわたしでいいとしたら、そう認めてくれる人がいたとしたら、どれほど心強かったことだろう。橘果恋著『わたしとおなか』(サンマーク出版)を読んで、ふと学生時代を思い返してみる。今なら当時の無茶ぶりを笑うこともできるのに、学生を通り過ぎてから身につまされることの多いことといったらない。時が流れてようやく気づけることがあることを、この一冊によって改めて思い知らされたように感じる。そう、これは女子なら青春ど真ん中の、甘酸っぱいラブ・ダイアリーなのである。

 物語の主人公は、ちょっと太めの高校二年生の朝子。ある日、見知らぬ男子生徒に親友宛のラブレターを手渡されたことから、過酷なダイエットを決意する。何もかも自分が太っているせいだと思い込み、こんな自分は嫌だと。新しい自分になりたいと。無我夢中の朝子には、日々の体重の変化と憧れの先輩のことしか頭にない。そんな朝子のお腹が突然しゃべり出す。“ねー、食べちゃおうよ~ペコ”とか、“もー、おなかペコペコペコ!”とか。それはまぎれもなく朝子のお腹の声だった。朝子の本心とも受け取れる。そして、相棒ペコとのダイエット生活がはじまるわけだが、ペコは朝子のダイエットには猛反対。朝子の家族も猛反対。恋に友情に悩みながら、朝子は自分自身と向き合うことになる。その過程のもどかしさは、この年頃にとって切実な大問題に違いない。

 日記形式によって描かれる朝子の日常は、痩せた途端に変わりはじめる。見知らぬ男子生徒から親友宛ではない正真正銘のラブレターを渡されたり、学校中の憧れの的である先輩たちと親しくなったり、幼馴染みの男の子から告白されたり。もちろん、それに対して気にくわない女の子たちからの鋭い視線を受けたり、親友となんとなく気まずくなってしまったり…もうめまぐるしい変化満載なのである。こう書き連ねてゆくと、昔読んでいた少女漫画を思い出す。ベタな展開ながら、女子ならではの恋に恋して憧れていたあの夢の世界である。朝子が憧れているテニス部のエースである悠也先輩、妙にうんちくを並べる健二郎先輩、読者モデルでお嬢様の麗花先輩、そして朝子の幼馴染みの湘太、親友の奈々…。どの登場人物もそれぞれに魅力に溢れ、物語が展開されてゆく。

 帯には少女漫画家である、いくえみ綾さんの言葉“私の萌えツボは、健二郎先輩。少女漫画家魂、くすぐられまくり”とあるのだが、わたしもやはり健二郎先輩に思わずぐぐっと前のめりになってしまった。博識で人の心が読めるくらいなのに、いざ自分のことになると、尻込みしてしまう。そんな不器用さが青春していていいなぁと思ってしまった。また、朝子にとっては完璧に思えていた麗花先輩にも弱点があって、思わずほろりときてしまう。そう、朝子の周囲は人間味のある人たちがいっぱいなのだ。これは単なるダイエット日記ではなく、人間的魅力をも兼ね備えた成長記録とも言えるだろう。朝子が今後どんな女性に成長するのか楽しみでならない。くれぐれももう無茶なことはしないでね、と学生時代を通りこしたわたしは朝子にそっと語りかけたい。嗚呼、青春万歳!

4763198734わたしとおなか
橘 果恋
サンマーク出版 2008-11-13

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