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2008.09.22

未・フレンズ

20080903_002 ああ、これはいつか見た光景。ああ、これはいつか感じた葛藤。わたしの中に渦巻く過去の記憶を揺さぶる何かを、確かにここに見て、確かに痛感した気がした。目の前に置かれたちっぽけな出来事に追われるわたし自身を、それでもいいのだとやわらかに肯定する、魚住直子著『未・フレンズ』(講談社文庫)は、魅力的な児童文学作品のひとつである。世界はとてつもなく広い。けれど実際のわたしたちといったら、ひどくちっぽけな存在に過ぎなくて、生きづらい生きづらいと嘆くことの連続だ。生かされているからには、生きなければならない。弱いわたしたちは、だから誰かと繋がりを持とうとする。いや、きっと繋がらずにはいられない生き物なのだろう。

 この物語の主人公・深澄(みすみ)は、小さな頃から“仕事ニンゲン”の両親から自立を強いられ、私立のお嬢様学校にも馴染めないまま、十五歳という多感な年頃を過ごしている。深澄の中に渦巻くのは、幼い頃から感じ続けてきた両親に対する憎悪と日々の虚しさ、切実なる寂寥感だ。そんな中、街はずれの崖の上でタイの少女・チュアンチャイと出会う。彼女は転職先から家に帰ってこない父親を待ち続けながら、病気の母親を懸命に支えながら必死に生きていた。生まれ育った環境も、置かれている境遇も違う二人が、互いのことを思い合い、友情を深めようとする過程の中で、金銭的な問題や親子関係の問題など、大人たちの事情が絡み合い、二人を引き裂こうとするのだった。

 物語は現代社会における問題も散りばめつつ、少女たちが心に抱えている闇の部分を浮き彫りにする。深澄とチュアンチャイ。この二人のどちらがより重たい事情を抱えているかは、もはや問うべきことではないだろう。それぞれがそれぞれに、自分の目の前に置かれた問題から目を背けずに、どう立ち向かえるか。そして、どう生きてゆくべきかが問題なのである。彼女たちが寄り添おうとすると、立ちはだかってくる問題は、大人になったわたしたちにも通じる何かを思わせる。不恰好ながらにも懸命に生きようとする姿に対して、人は何も文句が言えないはずだ。ちっぽけなわたしたちは、そういう積み重ねで生きている。日々を繋いでいる。そして、誰かと繋がっているのだから。

4062757508未・フレンズ (講談社文庫 (う54-3))
魚住 直子
講談社 2007-06

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 ≪魚住直子の本に関する過去記事≫
  『非・バランス』(2008-06-14)
  『Two Trains』(2008-07-26)
  『リ・セット』(2008-07-31)
  『超・ハーモニー』(2008-08-14)


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コメント

どんな道を選んだとしても、運命の試練に似た辛苦がいつだって伴いますね・・・。たとえ逃げたとしても逃げた道がまた歩む道。だとしたらやっぱり信じた道を歩きたいですね。信じている人たちと。

投稿: Pepe | 2008.09.22 21:15

Pepeさん、コメントありがとうございます!
そうですね。きっと、いつだって試練はつきまとうものなのでしょうね。
どんな状況下に置かれても、自分の信じた道を信じた人と歩めたら、幸せだと思います。たとえ裏切られても、悔いのない選択をしたいものですね。

投稿: ましろ(Pepeさんへ) | 2008.09.22 21:31

お久しぶりです。
レビューを読んでて、とってもこの「未・フレンズ」を読みたくなったので、
アマゾンで注文しました。届くのが楽しみです。テーマと
>それでもいいのだとやわらかに肯定する
という言葉から、見当違いかもしれないけど、
なにか個人的にどうしても「14才の君へ(池田晶子)」が読み返したくなってきて、先程読み返していました。

「人との繋がり」って、大人も誰もが棚上げしている問いで、35近くになっても、胸を焦がすものがあります。
是非おすすめを読みますねぇ。ありがとうね。

投稿: むらかみ | 2008.09.27 00:51

むらかみさん、コメントありがとうございます!
わたしの拙い言葉足らずなレビューでも「読みたい」と思ってくださって嬉しいです。
児童書とは言え、かなりダークな物語なので、
どれだけ光や希望を見つけられるか、かなり苦戦しました。

「14歳の君へ」はぱらりとしか読んだことがありませんが、
通ずるものはかなりあるように思います。
生きる上で、人との繋がりは逃れられないものがあって、
繋がりを断とうとしても、いやでも繋がってしまう。
生きづらいからこそ見えてくる何か、苦しいからこそ感じる何か。
そういったものを忘れずに日々を過ごしてゆけたらと思っております。

投稿: ましろ(むらかみさんへ) | 2008.09.27 02:34

コメントでは、はじめましてになります。
魚住直子さんの、「未・フレンズ」、面白そうー!!!
こういった物語大好きです。
ずっと前に読んだ、ルル・ワンの小説を思い出しました。
文庫で出ているのですね。
本屋で探してみます。
ましろさんのレビューって、レビューというより一つの物語みたいになっていて、押し付けがましくなくて好きです。
私も見習わねば……。
感想書くのって難しいんですよねえ。

投稿: 椿子 | 2008.10.02 17:23

椿子さん、コメントありがとうございます!
お!お好きですかー?
思春期の少女のモノは、わたしも大好きなのです。
児童書なので、ルル・ワンの作品よりはずっと読みやすいと思います。
ちなみに文庫化にあたり、かなり単行本『像のダンス』を改題し、
加筆・訂正したものが、この『未・フレンズ』です。

レビューを書くのって、本当に難しいですよね。
4年続けてみたけれど、やっぱり波に乗れないときは書けないです。
自分の主観の押しつけにならないように、
なるべく作品に対して肯定的であるように努力中ですが、
オススメと押しつけの匙加減は、難しいですね。

投稿: ましろ(椿子さんへ) | 2008.10.02 22:39

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