« まんまるおつきさまをおいかけて | トップページ | 超・ハーモニー »

2008.08.12

君は永遠にそいつらより若い

20070318_013 社会生活において難なく暮らしているように見える人だって、大なり小なりこころの痛手を抱えている。どこかいびつに歪んだ視界に入ってくる光景は、その歪みすら気づけないほどに痛みの根を張りめぐらせ、しばしばわたしたちを苦悩の渦に巻き込んでしまう。そうして、幼少期に受けた傷というものの根深さを、広い意味合いでの暴力というものに対する怒りを、津村記久子著『君は永遠にそいつらより若い』(筑摩書房)を読んで、改めて感じた。すべてがフィクションとは思えないほどにリアリティを感じさせる、気怠くも、衝動に突き動かされる日常を描いた物語展開と、そのタイトルの意味するところを理解した後、読後感は予想外に胸の奥底にずしんときた。

 主人公ホリガイは、身長175㎝と大柄な上に22歳にして処女。そんな彼女は、自分のことを“「陽気なポチョムキンでええす。どなたか暇な方、五千円でよろしく」などと無駄に元気に言って、そこそこのさめた笑いをとりたい”などと、自嘲気味に語る。周囲の学生たちよりも早々と就職先も決まって、後は卒論に取り組むだけ、という身分だが、彼女なりに明るくも苦悩していることが伺える。それは、彼女が児童福祉の世界に飛び込むことになったきっかけにも関係している。また、彼女を取り巻く友人たちも、それぞれに歪な形で苦悩しており、個性的な面々が揃っている。中でも、後輩であるイノギさんとの出会いは、彼女にとって、大きな転機となってゆく。

 この物語の前半部分で示唆しているように、人との出会いは本当に運命的なものだ。ささやかなきっかけで急接近することもあれば、自然と薄れてゆく縁もある。ぷつりと途絶えることだってある。そんな数え切れないほどの矛盾を抱えつつも、人は日々出会いと別れを繰り返してゆくのだろう。後半部分になればなるほどに、人々の抱える“暴力”や“憎悪”といった闇の部分が露呈してくるわけだが、それでも筆致は痛快なほどさらりと描かれていて、淡々とすらしている語りだ。虚しいくらいの、僅かばかりの暴力に対する抵抗は、その後どう解決するのか。わたしたちに残されている手段は、ほんの少ししかないのか。こころの痛手を抱える一人として、それを強く知りたいと思った。

4480803947君は永遠にそいつらより若い
津村 記久子
筑摩書房 2005-11

by G-Tools

 ≪津村記久子の本に関する過去記事≫
  『婚礼、葬礼、その他』(2008-07-13)
  『カソウスキの行方』(2008-08-05)

人気ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログ←宜しければクリックお願い致します。

|

« まんまるおつきさまをおいかけて | トップページ | 超・ハーモニー »

36 津村記久子の本」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55029/42146620

この記事へのトラックバック一覧です: 君は永遠にそいつらより若い:

« まんまるおつきさまをおいかけて | トップページ | 超・ハーモニー »