« 君は永遠にそいつらより若い | トップページ | わたしとあそんで »

2008.08.14

超・ハーモニー

20080724_008 たった一人きりでも、この世界に自分の存在をまるごと肯定してくれる誰かがいてくれたのなら、それ以上に幸福なことはない。そうして、そうなることで自分自身も自分の存在をはじめてまっすぐに肯定できるような気さえするのだ。もちろんそれは、あくまでも自己に対する肯定の気持ちの低いわたしの考えに過ぎないのだが、魚住直子著『超・ハーモニー』(講談社文庫、講談社)を読みながら、ふと感じた“自分の存在の肯定”ということについて、“他者から認められる”ということについて、改めて自分なりの答えを出さなければならない気がしたのだった。思春期特有の鬱積した感情や、ひどく息苦しい家庭内の雰囲気というもの、自分を、そして、他者を認めるとうことのプロセスを温かみのあるタッチで描いている一冊である。

 これまでただ一心に猛勉強することで、両親の期待に応えてきた主人公・響(ひびき)は、中高一貫の有名私立中学に入学したものの、毎日予習に明け暮れて授業についてゆくのが精いっぱい。仲良くつるめるような友人もいない。そんな中、7年前に家出した兄ちゃんが、女になって帰ってくる。たった三週間のこととはいえ、ただでさえ、窮屈な家庭内の雰囲気はさらにギクシャクしてしまう。まともに口をきこうとすらしない父親、兄について理解を示しているように振る舞いながらも肝心な問題から逃げている母親。そういう家庭の中にあって、兄がこの家を出ていった理由や舞い戻ってきた理由を知り、響が少しずつ成長を見せてくれるのが、読み手としては何ともたのもしく感じられる。

 自分自身の存在を肯定することと、他者から認められること。そのふたつの事象には、かなり深い繋がりがあるように思えてならない。わたしたちの多くが、他者から自分の存在を認められることによって、この世界に生きているからこそ、今という瞬間があるのだと。また、他者から認められることによって、自分の立ち位置を理解することができ、生きやすい日常を形づくっているとも言えるだろう。そうして、そのふたつの事象の見事なる調和によって、わたしたちはこの世界のどこかにいる誰かと出会い、結ばれて、ときどきたまらないくらいの幸福感に包まれる。この物語のタイトルである“超・ハーモニー”は、もしかしたら、そんな意味合いも含まれているのかもしれない。

4062754444超・ハーモニー (講談社文庫)
魚住 直子
講談社 2006-07-12

by G-Tools

 ≪魚住直子の本に関する過去記事≫
  『非・バランス』(2008-06-14)
  『Two Trains』(2008-07-26)
  『リ・セット』(2008-07-31)


人気ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログ←宜しければクリックお願い致します。

|

« 君は永遠にそいつらより若い | トップページ | わたしとあそんで »

74 その他の本」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

認められることってそれを考えること自体が
とても難しいことですね・・・。
他人が認めてくれることも自分で判断しなくちゃ
いけないなんてね。
誰でもありのままの自分を肯定されたいって気持ち
あると思います。でもそれは他人という不確定な人で
なくて、確かな大切な人に許されていたい。僕は
そういつも願っています。

超・ハーモニーが奏でられたら。
とても素敵でしょうね。

投稿: Pepe | 2008.08.16 01:20

Pepeさん、コメントありがとうございます!
そうですね。本当に難しいテーマですよね。
考えさせられることが多くて、児童文学も侮れないなぁとつくづく思いました。
わたしもたった一人きりでもいいから、
自分にとって大切な人に自分自身をちゃんと理解して欲しいという気持ち、
いつも抱えながら生きています。
もしかすると、それは人間一生抱えてゆくものかもしれないですね。

“超・ハーモニー”というタイトルは、ネタバレになってしまうから書けなかったけれど、
本来は、この物語のクライマックスシーンからきているようです。
わたしもわたしなりのハーモニーを奏でたいなぁと思います!

投稿: ましろ(Pepeさんへ) | 2008.08.16 06:53

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55029/42168141

この記事へのトラックバック一覧です: 超・ハーモニー:

« 君は永遠にそいつらより若い | トップページ | わたしとあそんで »