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2008.08.31

ミュージック・ブレス・ユー!!

20080824_027 今いる自分の立ち位置だとか、自分自身の置かれた状況だとかを本当の意味でしっかり把握できている人間というのは、一体この世の中にどれくらいいるのだろう。とりわけ、青春真っ盛りの頃なんていうのは、曖昧な自分の足取りに歯がゆさを感じるものである。津村記久子著『ミュージック・ブレス・ユー!!』(角川書店)の主人公のように、人との距離感に敏感で、高校三年という受験を控えた人生の転機に立たされている年頃なんかには、“今のあたしはなんなんやろう”とか“なんであたしはこんなに自分のことがわからんのやろう”と自問自答を繰り返す時期として、身に覚えのある人は多いのではないだろうか。そんな日々から主人公を解き放ったのは、音楽というひとつのツールだった。

 主人公・アザミは、赤く染めた髪に黒いフレームの眼鏡をかけ、派手な歯列矯正具をつけた長身の女の子。空虚な日常を支えるのは、パンクロック一色である。音楽プレイヤーを肌身離さず、音楽評を書きとめ、音楽について考えることは、将来について考えることよりずっと大事だと思っているような子でもある。そんなアザミは受験を控えていながらも、進級すら危うく、彼女とは対照的な親友・チユキに支えられて、何とか学生生活を送っている有り様だ。他にも、他校の生徒や、同じ矯正歯科に通う男子生徒、同じような洋楽オタクくんなどとも親しくなる機会に恵まれるものの、なかなか素直に深入りできない、主人公の曖昧な態度とぐだぐだっぷりが、多くの人の共感を呼ぶことだろう。

 “今のあたしはなんなんやろう”とか“なんであたしはこんなに自分のことがわからんのやろう”と自問自答を繰り返すアザミ。そんな彼女の迷いや疑問は、高校三年という時期で将来を決めかねたわたし自身の過去と、かなり重なるところがある。わたし自身の場合は、パンクロックではなく、ハードロックや文学に傾倒していたのだが。早々推薦で進路が決定してゆく者、がむしゃらに勉強にいそしむ者…そんな中において、わたしはそのどちらにも属することなく浮いていたからである。授業中は読書に耽り、テストをボイコットし、ある意味問題児で受験どころではなかったわたしが、こうして今に至るのは、奇跡的なことであるとさえ言える。過ぎてみれば、すべてが煌めくような思い出だ。

4048738429ミュージック・ブレス・ユー!!
津村 記久子
角川グループパブリッシング 2008-07-01

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 ≪津村記久子の本に関する過去記事≫
  『婚礼、葬礼、その他』(2008-07-13)
  『カソウスキの行方』(2008-08-05)
  『君は永遠にそいつらより若い』(2008-08-12)


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36 津村記久子の本」カテゴリの記事

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コメント

ましろさん、こんばんわ

音楽♪ これは人間が聴力を持った古来からの自分を高揚させたり慰めてくれたりする
同時共感性も持った素晴らしい神様からの贈り物だと思います。

実際に自分の好きなMUSIC♪が流れてくると・・
自然に身体全体が街中の雑踏や喧騒なんか忘れて、のめりこみますもん!(笑)
好きな音楽グループのライブ♪に行くと共感性を求めてファンが集まりますしね(^^)

私めも10~20代の頃はドラムを叩く弟の影響で外国のハードロックにも興味惹かれてテンポの速い過激な音楽を聴いていましたし、
それ以降カーペンターズやO・N・ジョンやABBAなどポップでリズミカルな音楽も好きになりました。※今は演歌も歌います^^;

感情というモノがある限り自分を完全に客観視できるほど完成しつくした人はたぶん世の中にいません! 
いくつになっても・・
この世に居て生きている限り心は常に動くし気になることには“やみくも"にもなりますよね^^;
若い世代ではそれが顕著で心が動きやすいだけです。
※いくつになっても動きやすい性格の持ち主もいますけど。

好きな音楽、好きな本、好きな人や動物・・
そんな惹かれる対象があって、感じられるだけでも幸せなのではないでしょうか?
そして、自分なりの感性を磨いていくことで少しでも周りの人たちをも元気づけられる形!
それが理想ですし心の青春だとも思いますよ。

日々いろんな事がありますが、めげずに
疲れた時は自分にとっての癒やし音楽♪も聴きながら
一歩ずつ前へ進んでいきましょう。

投稿: AJ | 2008.09.04 21:47

AJさん、コメントありがとうございます!
そうですね。音楽っていうのは、ある時は気持ちを高めてくれますし、
慰めてもくれる、楽しい気持ちにもさせてくれるツールとして、
いや、それ以上の、今となっては生活に欠かせないものなのかもしれませんね。
わたしもかなりのめり込んでいる方かも知れません。
ライヴの高揚感は、また特別なものがありますし、
その現実から引き離された、非現実を観客が一体となって感じる至福の時ったら、
言葉には言い表せないほどだったりしますよね。

AJさんもハードロックに夢中になった過去があるのですね。
挙げられたアーティストは、名前とスタンダードなヒット曲くらいしか存じませんが、
夢中になれたあの青春時代は、わたしにとっても今でも大切な宝物です。

>好きな音楽、好きな本、好きな人や動物・・
>そんな惹かれる対象があって、感じられるだけでも幸せなのではないでしょうか?
>そして、自分なりの感性を磨いていくことで少しでも周りの人たちをも元気づけられる
>形!
>それが理想ですし心の青春だとも思いますよ。

まさに、おっしゃるとおりだと思います。
“心の青春”って、いい言葉ですね。
いくつになっても、好きなものに対しては貪欲になって、
自分の感性を磨き続けられたらと思います。

投稿: ましろ(AJさんへ) | 2008.09.05 05:30

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