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2008.07.26

Two Trains

20080724_4005 少女時代に感じたせつなさを、当時繊細にも体当たりで傷つき、傷つけあった姿を、わたしは今、ひどく懐かしい気持ちで思い出す。思えば恥ずかしい言動も行動も繰り返し繰り返ししてきて、今だって少しも変わらない部分が多くあるけれど。それでも、わたしは確かに歳を重ね、ほんの少しは身も心も成長しているのだ。魚住直子著、あずみ虫絵『Two Trains』(学習研究社)は、ちょうど微妙な年齢にさしかかった小学六年生の少女たちの苦悩を描いた物語である。成長期真っ盛りで大人っぽい子もいれば、まだまだあどけなさを残した子もいる。そんな中での人間関係は、大人よりもさらに困難なものかもしれない。それは、学校と友だち関係がすべて、と言ってもいいくらいの日常だからだ。

 一話目に収録されている「変心」は、女の子にはつきもののグループ行動に悩む少女の物語だ。グループ内でいじめの対象になったように感じてしまった主人公は、それに立ち向かおうとするきっかけを、どのグループにも属さない少女から得る。誰もが寂しさを抱えている。けれど、本当の自分は群がっていてばかりでは見つからないことを思い知るのだった。二話目の「ミジュク」は、生徒たちからバカにされ続ける先生のことをひそやかに案ずる少女の葛藤を描いている。友だちに同意しなければ、というもどかしさが何ともせつない。三話目の「ばかじゃん!」では、友だちの何気ない一言に傷つき、思い悩む。互いに誤解をしながら、人間関係が成り立っていることを今更ながら気づかされる。

 四話目の「親友になりたい」では、四人グループで一緒にいながらも、実はその中の一人と深い関係を築きたくてたまらない少女の思いを描いている。だから、四人のうちの特定の誰かと仲睦まじいことに嫉妬するし、本当は他の友だちを寄せつけたくない。けれど、本当の親友とは、“なりたい”と思ってなるものではないのかもしれないのだった。表題作にもなっている五話目の「Two Trains」。それぞれに様々な事情を抱えながらも、ぼんやりと電車の外を眺めているときに、ほんの一瞬毎回見かける少女のことを、互いに気になっていた二人が出会う。手をふり、ふり返し。そうして、やがて実際に語り合うまでになる。奇跡のような煌めきを放つ物語である。だが、それも刹那。何ともせつないのだった。

 わたし自身、女の子たちがグループで行動する心理が、少女時代当時はさっぱりわからなかった。休み時間のたびにトイレに連れ立って行く。いつも一緒に行動している友だちにもかかわらず、その人がいなければ悪口を平気で言う。そういうある種女の子独特の性質そのものに嫌悪感を抱いた。そのためにいわゆるいじめの対象になったりしたものの、基本的に一人で行動する方が気楽だったタイプだ。けれど、本当は寂しかった。教室の片隅で本を読みながら、誰かが声をかけてくれるのを待っていた。もちろん、一人も友だちがいなかったわけではなくて、同じような本読み友だちもいたし、つかず離れずの友だちはいたのだが。友だち関係は、いくつになっても本当に難しいものだ。

4052027590Two Trains (学研の新・創作シリーズ)
あずみ虫
学習研究社 2007-05

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 ≪魚住直子の本に関する過去記事≫
  『非・バランス』(2008-06-14)

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コメント

子供の頃のきもちって忘れたくないけど
忘れてしまいたいようなトラウマも
たくさんあります・・・。

子供時代ゆえのもどかしさやすれ違いが
あるけれど、今大人になってからも
同じようなことを繰り返しているような
気がしてなりません。

投稿: Pepe | 2008.07.27 23:49

Pepeさん、コメントありがとうございます!
わたしも同感です。
子どもの頃のトラウマ的なものって、
大人になってからもかなり影響を及ぼしますよね。
いつまでも大人になれないもどかしさも抱えつつ、
それでも生きねば、とわたしは自分自身に言い聞かせるようにしています。
それでも、たびたび挫折してしまうんですけれどね(苦笑)

投稿: ましろ(Pepeさんへ) | 2008.07.28 14:31

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