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2008.06.06

あなたの世界が広がる詩

20080606_008 真剣に詩を読み出したのはごくごく最近のことだから、その解釈が自由だと云われれば云われるほどに、自分の世界の小ささを思い知らされる。もちろん、それはそれでひとつの読み方には違いないのだが、ついつい他の人たちがどんなふうに詩を解釈するのか、気になってしまうわたしだ。川崎洋著『あなたの世界が広がる詩』(小学館)は、詩人である著者の豊かな発想力が感じられる一冊だ。著者の心に響いた詩25編は、三好達治の「雪」にはじまり、新進気鋭の詩人のものまで多種にわたる。詩に喚起されたイメージは、著者の詩人たちとの思い出や日常のたわいない出来事など、さまざまなものを掻き立ててゆく。また、推敲、パロディ、擬音語・擬態語、ユーモア、比喩といった詩に纏わるコラムも収録。

 著者が取り上げた詩の中でも、小池昌代の「ねこぼね」は、猫へのたまらない愛おしさをぴたりと言葉にした詩だと思った。“猫を撫でてみた。すると、毛ではなく、肉でもなく、骨のかたちがてのひらへ残る。あったかいくぼみやでっぱり。そのでこぼこ。あ、これが猫。こぼれそうにしなやかな、これが、とくべつのさびしさか。”(詩集『青果祭』)この感覚。この言葉選び。いいなぁと思う。そして同時に悔しいなぁと思う。毎日のように猫を猫が嫌がるほどに撫で回しているというのに、その猫を猫とたらしめているでこぼこに思いを馳せたことなどなかったから。ねこぼね。もちろん、これは造語だが、愛猫を撫でるとき、これからは毎回この詩を思い出して、ねこぼねを意識しそうだ。

 それから、著者が一番はじめに取り上げている三好達治の「雪」。“太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。”学生時代に一度はふれる有名なこの詩ほど、さまざまな解釈ができる作品はないかもしれない。太郎と次郎は兄弟なのか、同じ屋根の下に寝ているのか、離れて別々に寝ているのか、太郎や次郎を眠らせたのは誰か…そういうことを細々と考えてゆくと詩の裏側にある物語が浮かんでくる。著者が紹介している解釈の中には、“眠らせ”を“殺す”としたものもあり、本当に詩の世界は奥の深いものであると思わず唸ってしまう。詩はもっと自由に読んでいい。詩の解釈に正解などない。本全体から感じられる強いメッセージに、何だかほっと安堵した。

4095044225あなたの世界が広がる詩 (小学館ジェイブックス)
川崎 洋
小学館 1998-11

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コメント

詩の解釈の真相をどうしても
人は求めがちです。
最近では詩に限らず、何事に於いても
一つの正解を出したがる傾向があるような気もします・・

詩の世界をもっと自由に!楽しく!
遊歩くことができれば、と願う

僕の好きな詩人に宮沢賢治がいますが、彼は
「(自分を含めて)どうか人びとが
  明るく生きて行けますように」
と考えていたそうです。

今は亡き彼と同じことを今に祈りたいと思います

投稿: Pepe | 2008.06.06 16:54

Pepeさん、コメントありがとうございます。
何事においても、正解をすぐに出したがるわたしです(苦笑)
いけませんね。
せっかちというか。頭がかたいというか……
発想力、想像力を訓練するのは、とても難しいものですね。
それも、大人になってから、だなんて。
もっと柔軟になれたら、きっと生きやすくもなるだろうに、
なんてことも思ったりします。

宮沢賢治の言葉。素敵ですね。
わたしもそれを切に願いたいです。
教えてくださってありがとう。

投稿: ましろ(Pepeさんへ) | 2008.06.06 18:42

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