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2008.06.20

子供にしてあげたお話 してあげなかったお話

20070524_016 愛情に満ちた語りかけに、ただもうくらくらとする。自分にはない母性と、無限に感じられるほどのあたたかなやさしさ、そのやわらかなまなざし。そして、母性に染まりきらない一人の女性としての尽きない魅力をも感じさせる、気品のあるエロティックさ。岸田今日子著『子供にしてあげたお話 してあげなかったお話』(大和書房)には、そんな著者の幾通りもの魅力が詰まっている。子供にしてあげたお話、女の子=六歳、わたしが出逢ったひと、女友だち男友だち、子供にしてあげなかったお話、と題された五つからなるこの一冊は、たった一人に向けられた物語、エッセイ、著者の中に住む読者のために創作されたショートショートを収録。なお、1975年刊行作品に加筆、再編集されたもの。

 一番はじめに収録されている、子供にしてあげたお話の「縞ねずみになぜ縞ができたかのお話」は、忘れっぽいシマねずみがおつかいを頼まれる物語。母親がやさしく娘・まゆに語りかける様子が、何とも心地よく読める。同時にこんなにも愛情を注げる対象がいることの奇跡に、いい意味での眩暈をおぼえてしまう。女友だち男友だちの「ジャムは公園で」では、まゆの飼い猫となったジャムという名の猫の目線で物語は展開するのだが、その人と猫との関係が絶妙で、読んでいてじーんとなってしまう。つかず離れずの関係の中でも、きちんと寄り添い方を知っている者との出会いは、強く固い絆で結ばれるに違いない。それが人間同士ならば、最高だけれども。なかなか難しいのが現実だ。

 最後に、子供にしてあげなかったお話の「お兄ちゃま」。これはもう、“子供にしてあげなかった”というだけあって、大人向けのエロティックな物語である。見ず知らずの女性から、たった一人きりの兄を託す内容の手紙を受け取った<私>。多くの謎めきにどきどきしつつ、その展開に気持ちを掻き乱されつつ、<私>と共に手紙を読んでゆくことになるのである。大人だからこそ楽しんで読める、毒のある物語だと言えよう。また、この一冊には、味戸ケイコさんの絵も彩りを添えていて、物語の雰囲気としっくりぴったり合っているのも魅力のひとつ。その、ぞくぞくするような視線に少しばかり恐れながら、わたしはページを捲ることをやめられなかった。嗚呼、何ともいい読書時間。

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4479670378子供にしてあげたお話 してあげなかったお話
岸田 今日子
大和書房 2001-06

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コメント

はじめましてドンチャックと言います。僕もウェブリブログの方で本に関するブログを開設しているのですが、読書のネットワークを作るため、同じようなブログの方を探してリンクのお願いをして回っています。
相互リンクでなくて構わないので、もしよろしかったら僕のブログにリンクを貼らせてもらえないでしょうか?
気が向いたらメールください。よろしくお願いします。

投稿: ドンチャック | 2008.06.22 16:25

ドンチャックさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
リンクは大歓迎でございます。
ドリコムRSSの方で、こちらからもリンクさせていただきたいと思っております。
今後もどうぞよろしくお願い致します。

投稿: ましろ(ドンチャックさんへ) | 2008.06.23 06:17

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