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2008.05.25

女がひとり頬杖をついて

20070524_44014 誰かに頼るのではなく、何かにすがるのでもなく、時にまかせるのでもなく。わたしはわたし自身にもっと誠実であれ、と思った。もっと強くあれたなら。もっとのびやかであれたなら。もっともっと自分自身と向き合えたなら。その自らの手で何かを切り開くことができたなら。そう生きられたなら、と。茨木のり子著『女がひとり頬杖をついて』(童話屋)を読み終えて、そんなことを思った。何ものにも倚りかからず、潔く生きた著者の言葉は、確かな説得力と強い意志をもって、読み手の心にじわじわと沁み入ってくる。代表作である「倚りかからず」や最後の詩集となった「歳月」など、7冊の詩集から選びぬかれた26篇を収録した一冊である。

 タイトルにもなっている“女がひとり/頬杖をついて”ではじまる「怒るとき許すとき」。女として、一人の人間としての生き方を考えさせられる一篇である。“それを教えてくれるのは/物わかりのいい伯母でも/深遠な本でも/黴の生えた歴史でもない/たったひとつわかっているのは/自分でそれを発見しなければならない/ということだった”。自分で発見する、ということ。つまりは誰かに頼るのではなく、何かにすがるのでもなく、時にまかせるでもなく、手本などない、もちろんマニュアルなどない、そういう中で見出した自分なりの答えというものの強みを、それがもたらす人間としての成長というものを、はっと思わせる。そして、誰もが手探りの日々を生きている、ということも。

 最後に収録されている「りゅうりぇんれんの物語」。日本軍が強制連行した中国の若い農民の姿を描いたこの物語には、終始胸を締めつけられ、圧倒される。かつて起きてしまった悲劇に、運命と運命とが出会うその奇跡に、そしてそれを紡ぐ言葉の力というものに、ただただ驚かされるのである。また、「答え」という一篇には、祖母に幸せだった頃のことを問うた幼き日を思い出す著者の姿がある。間髪を入れずにさらりと答えた祖母に驚きつつ、今それをしみじみと噛みしめるのである。幸せな時をわたしたちは何かにつけて忘れがちだ。悲しみや憎しみはすぐさま引き出せるほど覚えているのに。何て卑屈にできている…そう恥じ入りながら、気持ちを新たにしようと思った今日だ。

4887470789女がひとり頬杖をついて
茨木 のり子
童話屋 2008-01

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コメント

ましろ様
最近は蒸し暑かったり、寒かったり、雨が降ったり。
天気次第で気分も変わりますが、私は結構雨が好きです。
だから雨の日には、ほお杖をつきません。
曇った日は無意識にほお杖をつくことはありますが、
そこには、あきらめ・逃避・機械的な作業をするだけ 等
考えているようで実は何も考えていなかったりします。
私の年代では、「もう頬杖はつかない」が有名ですが、
頬杖は積極的に何かをしようという状況ではない事が多いですね。しかも、ため息が漏れなくついてきたりします。
私にとっての頬杖ってその程度の認識しかないです。
(_"_;)。。・・’’

投稿: 銀河☆ | 2008.05.26 01:42

銀河☆さん、コメントありがとうございます。
わたしも結構雨が好きです。
とりわけ、雨音を聴きながらの読書なんて最高だったりします。
頬杖。確かに、積極的に何かをしようとするときにはつかないものかもしれませんね。
ぼーっと何かに思いを馳せるとき、ため息とともにあるような、
そんな淡くあるものなのでしょうか。
でも、そういうときこそふっとひらめくものと出会えたり、
新たな発見があったりする気もします。
頬杖。なかなか侮れませぬ。

投稿: ましろ(銀河☆さんへ) | 2008.05.26 16:13

ぼくに、詩への扉を改めて開けてくれたのは、考えてみたら、茨木のり子さんの『詩のこころを読む』(岩波ジュニア新書)でした。石垣りんさんの詩に最初にふれたのも、この本です。だから最近、ましろさんがとりあげた、理論社の、茨木さんの本も、石垣りんさんの本も読んでいますが、ましろの文章のおかげで、また読んでみたくなりました。

投稿: 舘守仁 | 2008.05.26 18:05

ジンさん、コメントありがとうございます。
やはりいろいろと読まれているのですね。さすがです!
わたしの場合、教科書で代表作と名前を知っていた程度でして…。
最近ようやく、改めて読んでみようかなと思い立ちました。
詩の世界は本当に奥が深いです。
嗚呼、まだまだ勉強が足りませぬ。
『詩のこころを読む』も読んでみなくては!

投稿: ましろ(舘守仁さんへ) | 2008.05.27 18:39

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