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2008.05.19

戸村飯店青春100連発

20070514_002 ただただめっぽう甘い爽やかな風が吹き抜ける。これぞ青春。清く正しき青春に違いない。まばゆいばかりの青春に、嗚呼、くらくらする。まさに、こうありたい青春。こうありたい日常。こうありたい人間。どれもこれもが甘やかに優しく描かれているから、あまりにも眩しくてくらくらするのだ。その心地よさに酔いながら捲ること、321頁。最後までひたすらに青春の、瀬尾まいこ著『戸村飯店青春100連発』(理論社)。これは、性格も見た目も正反対の兄弟の成長物語である。コテコテの関西弁やベタなギャグにくすりとさせつつも、兄の視点から、弟の視点から、それぞれの心に潜む葛藤や疎外感など、若さゆえの悩みを細やかに描き出している。

 大阪の昔ながらの中華料理屋・戸村飯店の一つ違いの兄と弟。要領も頭も良く、きれいな顔立ちのモテる兄・ヘイスケ。ごつい顔立ちと体格で、なおかつ熱血な弟・コウスケ。店の手伝いを率先してやり、常連さんからも可愛がられている弟からしてみれば、兄は家業を継ぎたくないばっかりにちっとも店を手伝わないいい加減なヤツ。一方、この兄は兄で、大阪特有の濃い人情の町から距離を感じ、早く家を出たいと思っている。何に対しても器用でそつないはずの兄の心の内は、実は疎外感でいっぱいだったのである。物語は、兄が家を出て東京で暮らす一年間と弟の最後の高校生活とを、それぞれの視点からかわるがわる描き、その思いが重なり合うときをはらりと見せてくれる。

 この兄弟、離れてみてはじめて、見えていなかった互いのことを気づいてみたり、思ってみたり、何ともいびつな関係である。けれど、ゆっくりゆっくり通じてゆくその過程が、眩しいくらいに青春していてとてもいいのだ。もちろんそこは、彼らが出会う人々や周囲にいる人々のサポートあってこそのもの。コウスケの片想いの相手・岡野さん、親友の北島くん、ヘイスケの恋人のアリサさん、かなり熱血な古嶋くん、兄弟の両親や戸村飯店の常連さんたち。彼らなしには、このまばゆいばかりの青春物語はあり得ない。まさに、こうありたい日常、こうありたい人間たちがここに集っているのだ。嗚呼、だからくらくらする。そうして、ただただめっぽう甘い爽やかな風が吹き抜ける。

4652079249戸村飯店青春100連発
瀬尾 まいこ 小池アミイゴ
理論社 2008-03-20

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コメント

ましろさん、こんばんは♪
本屋大賞発表されましたが、私の中ではこの作品が本屋大賞です(笑)

瀬尾さんの作品の中では登場人物が多い作品なんだけど、それぞれの人物造形をうまく書き分けれてると思いました。

ましろさんの言葉を借りれば“これぞ青春”小説です。

TBいつもどおりでした(笑)

投稿: トラキチ | 2009.04.06 21:53

トラキチさん、コメントありがとうございます!
今回の本屋大賞には全く興味がなかったわたしです(苦笑)
本当にそれが売りたい本なのか?売れてるのだからもういいじゃないか、と。
ぼそっと言いたい。

瀬尾さんの作品は久しぶりだったのですが、いいですよね。
わたしには少々爽やか過ぎましたが、たまにはこういうのもいいものです。
青春したいですねぇ…(遠い目になる)

TBやはりダメでしたか…なぜだろう?はて。
こちらはスパム対策してないのですけれど。

投稿: ましろ(トラキチさんへ) | 2009.04.06 22:39

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