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2008.04.24

ほんたにちゃん

20070416_025 ひりつく脳内を抱えながら、ふと“わたし”という在り方について考えてみる。どうかすると過剰なまでに反応する自意識に、我ながら恥ずかしさを覚えつつ、それでも一生つき合うしかないわたしという存在を、自分自身でただただ抱きしめてやる。本谷有希子著『ほんたにちゃん』(太田出版)に描かれる、ひりひりと痛いまでの自意識過剰な勘違いの数々は、もはやある意味あっぱれといった感じである。もう何というべきか、読み手はその饒舌過ぎる語りに対して、もうもう苦笑するしかないのだ。この作品が著者の原点と言うべきもので、執筆当時19歳の自伝的処女小説のセルフリメイクとなれば、ミーハーなわたしは飛びつくしかなかった。恐るべし、本谷有希子!

 90年代の東京。カッコイイ自分が好き。自分は特別な人間。そんなふうに思ってきた<私>ことほんたにちゃんは、自分の痛さを重々承知している。けれど、今さらそれを変えることもできずにいた。ある日、通っている専門学校の飲み会で、ほんたにちゃんはカリスマ的存在のイラストレーター・野次と出会う。何となく(本当はかなりびんびんに意識して)飲み直すことになる二人だったが、それがほんたにちゃんと野次との戦いのはじまりとなるのである。と言っても、ほんたにちゃんにとって戦いなだけで、野次にとっては戦いでも何でもないはずなのだけれど…。ほんたにちゃんの過剰なまでの自意識は、様々に自分を演出することに夢中である。嗚呼、苦笑。

 “あなたが思うほど、他人はあなたのことを気にしない”ほんたにちゃんほどではないにしても、こんなことを言われた経験のあるわたしとしたら、何だか憎めないキャラクターのほんたにちゃんである。ほんたにちゃんの思考回路や言動を読むほどに、まるで自分の内面の奥深くに眠っている自意識がむくむくと目覚めた気がする。もしかして、一番痛いのはほんたにちゃんじゃなくてわたし自身かも知れない、と。そうしていつしかひりひりとひりつく思いを胸に、自分自身の在り方を考え込んでしまったわけである。決して文学的ではない作品に対して、ここまで頭を抱え込むことになろうとは…。いやはや、毎度のことながら驚くばかりでございます。本谷さん!

4778311167ほんたにちゃん (本人本 3) (本人本 3)
本谷有希子 okama
太田出版 2008-03-20

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» 本谷有希子さん『ほんたにちゃん』 [juri+cari]
カゼ薬が聞き出す前に読書{/hiyoko_cloud/} 本谷有希子さんの『ほんたにちゃん』{/kirakira/} 自分は特別な存在と信じる、専門学校生の「わたし」の極限まで肥大化した「自己」が暴走する話。 ちなみに、表紙の絵は、物語のクライマックス、自己が暴走してる場面。 最近書かれた本だと思って読み始めたので、 作品のテーマとか内容が、「第三期」{/star/}に入ったという著者にしては、いささか古めいている ことに違和感{/hiyoko_cloud/}を持ったのですが、 ... [続きを読む]

受信: 2008.04.26 12:39

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