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2008.02.13

あかいろの童話集

20050227_007 小さな頃から書物にふれて育ったというのに、わたしは意外にも童話というものを知らない。大人になってからペローやアンデルセンを少々読んだものの、それとこのアンドルー・ラングがヴィクトリア時代のイギリスで、世界各地の伝承文学からよりすぐりの作品を子どもたちに提供しようとした『あおいろの童話集』との違いも、実はよくわかっていなかったりする(日本では、川端康成訳で出版されてもいたようだ)。あまりにも残虐で暴力的なものや、根底に差別的な態度があると思われるものを避けたという編集から考えると、確かに表現はやわらかでまろやかなくちあたりではあるものの、あっさりと首が飛び、人が死ぬあたりは、さすが童話だと唸らざるを得ない。

 今回、某所の献本で同時発売の『あおいろの童話集』『あかいろの童話集』(東京創元社)のうち、『あかいろの童話集』のみを読んだ限りでは、無理難題を言いつける王様と、愚かにも従順で純粋すぎる姫、そして意地の悪い魔女という組み合わせが目を引く。もちろん、美しい王子と、美しい姫という構図も多い。或いは、何らかの魔術によって醜い姿に変えられている、という場合もあるのだが。そうして、時代背景から見えてくるのは、顔も知らぬ人を待ち焦がれたり、一瞬にしてよろめいて“愛しています”という、王子や姫のあまりにも非現実的なロマンティシズムだったりする。周囲はおどろおどろしく、血なまぐさく、獣の匂いが立ち込めていようとも、ものともしないほどの。

 けれど、さすがは世界各地からの伝承文学だけあって、ロマンティシズムばかりを語るわけではない。人々はときに憎しみに身をよじり、それでも厭きたらずに散り散りになり、欲望の深さに愕然ともなるのである。いつでも正義が勝つとは限らない。もちろん、いつでも悪が滅びるとも限らない。運命は誰の手の中にもないのかもしれないのだった。めでたし、めでたし、で終わる童話の背景には、必ずと言っていいほど、多くの犠牲や不幸がある。いくら美しく生まれようが、いくら賢さを備えていようが、童話の中でさえこんなにも残酷ならば、この世の中の方がよっぽど楽は楽である。そんなことをついぞ思ってしまうのは、わたしが甘い蜜の中にいるからかもしれない。

★収録作品「サンザシ姫」「ソリア・モリア城」「不死身のコシチェイの死」「黒い盗っ人と谷間の騎士」「泥棒の親方」「ロゼット姫」「ブタと結婚した王女」「ノルカ」「小さなやさしいネズミ」「六人のばか」「木の衣のカーリ」「アヒルのドレイクステイル」「ハーメルンのふえふき男」「金ずきんちゃんのほんとうの話」「金の枝」「マダラオウ」「イラクサをつむぐむすめ」「ファーマー・ウェザービアード」「木のはえた花嫁」「七頭の子馬」

4488018572あかいろの童話集 (アンドルー・ラング世界童話集 第2巻)
アンドルー ラング
東京創元社 2008-01

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コメント

ん?創元社?

確か、小林秀雄とか青山二郎とかが、
編集に携わっていた名門の出版社でしたっけ?

「あかいろの童話集」面白そう。
童話って、深いものがあるんですね。

投稿: ぴののわーる | 2008.02.14 00:50

ぴののわーるさん、コメントありがとうございます!
ど、どうなのでしょう?
知識がなくてすみませぬ。
東京創元社といえば、SFとか推理モノとかのイメージしかないわたしです。
ちなみにどれもこれもわたしの苦手ジャンルでございます。

童話。たまにはいいものですよ。
大人になってからしか味わえない面白味も、たくさんあるような気がしております。

投稿: ましろ(ぴののわーるさんへ) | 2008.02.14 06:15

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