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2008.01.28

駅から5分

20071204_041 つながる。つながってゆく。誰もが。誰も彼もが。どこかで。どこかしら。どこにだって。どこまでだって。つながる。つながっている。すれ違う人々の景色が重なって見えてくるのは、不思議と懐かしく思える光景の数々。何もかもが愛おしくて。何もかもが煌めいて。くらもちふさこ著『駅から5分』(集英社)に描かれているのは、花染町を舞台に織りなす人々の姿である。1話完結の物語の登場人物たちは、それぞれのエピソードの中ですれ違い、ときに出会い、交わってゆく。儚い偶然にも思えるそんな物語を目の前に、人はただすれ違うわけじゃない。何かしらの意味があって、必然があって、そうしてわたしたちはやがて出会うのだ…そんな思いを抱くのだった。

 会話に頼らずに、画で魅せてゆく物語展開には、はっとする場面がいくつもいくつもある。とりわけ印象的な「episode 1」には、優等生のよし子と不良だった沢田君の甘酸っぱい揺れる恋心が描かれており、彼らの視線がとらえる光景のひとつひとつの眩しさを、しかと感じ取ることができる。紫陽花、塀、マンホール、ポスト、電線、看板、門、階段、廊下、教室、黒板、クリーナー、窓…そうしたごくありふれたものたちが、特別なものに見えてくるのは、主人公たちの視線とわたしたちの思いが、どこかでシンクロしたからに違いない。いつだったか見た景色、いつだったか感じた思いを物語の中に見出して、遠い記憶の渦に呑まれてゆく。溺れてゆく。

 うって変わって「episode 4」では、現代のコミュニケーションなるものを深く考えさせられる斬新な物語が展開する。花染町のBBSで繰り広げられる会話と、一人PCに向かう赤松の心の揺れ。それが絶妙に絡まり合い、ふと自分自身の孤独さと向き合わされることになるのだ。うんうんと唸って、悶々とするほどに。可笑しくも、侘びしくも。また、巻末には相関図なるものがついているのだけれど、ここでまた、唸ることになる。それぞれの物語に登場してきた人物や光景、小道具などがつながりを見せるとき、物語はいっそう魅力的なものへと変化するのである。これから先、それぞれの物語がどう展開してゆくのか、楽しみでしかたないわたしだ。

4088654390駅から5分 1 (1) (クイーンズコミックス)
くらもち ふさこ
集英社 2007-11-19

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