« エスカルゴの夜明け | トップページ | さりぎわの歩き方 »

2007.12.11

弦のないハープ または、イアブラス氏小説を書く。

20061124_022 何かを創り出すということの苦悩を、垣間見た気がした。そうして、その苦悩の報われることの少なさを思い知らされた気がした。エドワード・ゴーリー著、柴田元幸訳『弦のないハープ または、イアブラス氏小説を書く。』(河出書房新社)は、物語を創作するということの苦悩を描いた作品である。デビュー作であるこの作品においても、既にゴーリー作品ではお馴染みになっている、皮肉を込めたユーモアとある種の憂鬱が感じられる。独特のタッチで描かれる線画のあちこちには、もちろん遊び心も忘れない。作中で、自身の作品に対しての評価や、大衆の作品の扱い方等、思わずにんまりしてしまうくらいにユーモアたっぷりに皮肉るのだ。

 高名な作家であるイアブラス氏は、小説を書くのに苦悩している。タイトルは既に決めていて、その名も「弦のないハープ」。途中、ワゴンセールで自身の作品を二シリングで見つけてしまうという、何とも気持ちの萎えるエピソードを盛り込みながら、読者をぐぐっと引き込んでゆく。そして、作品の表紙カバーについての“この絵。この色。最低だ…(略)醜く、下品で、理解不能…破滅的に間違ってもいる”と評するあたりも、読者としては思わず笑みを洩らしてしまう部分である。何しろ、文章には、この作品自体とそっくりな表紙を眺めているイアブラス氏の絵が添えられているのだから。きっと、このオレンジ色の本を指しての思いに違いない…。

 そんなふうに作者自身から評される表紙をよく見てみると、裏表紙には“ゴーリー氏、イアブラス氏、博識の友人”というクレジットがある。そのゴーリー氏の絵は、毛皮に白いテニスシューズを履いているという、ファンにはお馴染みのスタイルである。既にデビュー作にも自身を登場させていたことがわかって、何だかほくほくと嬉しい気がしてしまった。他にも、線画の中の文字をたどってみると、いくつも面白い発見があり、細部にわたってゴーリーの洒落っ気を楽しめる作品になっていることがわかる。とりわけ、イアブラス氏の書き出しの一文に至っては、その推敲に推敲を重ねている様子が、はっきりとわかるのが興味深いところである。

≪エドワード・ゴーリーの本に関する過去記事≫
 『敬虔な幼子』(2005-11-29)
 『エドワード・ゴーリーの世界』(2005-11-30)
 『うろんな客』(2007-8-26)

4309266991弦のないハープ またはイアプラス氏小説を書く。
柴田 元幸
河出書房新社 2003-11-23

by G-Tools

にほんブログ村 本ブログ
人気ブログランキングへ

|

« エスカルゴの夜明け | トップページ | さりぎわの歩き方 »

58 海外作家の本(アメリカ)」カテゴリの記事

69 アート・絵本」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

こんばんわ。
エドワード・ゴーリーさんの本を、京都の好きな本屋でよく見かけて気になっていたんですが、なんだかおもしろそうですね!
今度読んでみたいです。

投稿: 4040 | 2007.12.12 23:48

4040さん、コメントありがとうございます!
ゴーリーの作品、とってもいいですよー。
レオポール・ショヴォがお好きな4040さんなら、
きっと気に入られると思います。
読んだらぜひ、感想など聞かせてくださいませ。

投稿: ましろ(4040さんへ) | 2007.12.13 13:38

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55029/17339177

この記事へのトラックバック一覧です: 弦のないハープ または、イアブラス氏小説を書く。:

« エスカルゴの夜明け | トップページ | さりぎわの歩き方 »