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2007.12.25

ぼくとアナン

20070526_028 ひたひたと、やさぐれたこころにも染み入ってくる。忘れかけていた大事な愛情や、失いかけていた希望…そんなものたちを思い出させてくれる。そんなとびきり純粋な物語である、梓河人著『ぼくとアナン』(角川書店)。酒井駒子さんの装画にあるアナンらしき少年のうなじと痩せ型の猫(ぼく)に惹かれ、読むことにした次第である。猫視点で描かれる物語は、猫狂いのわたしにとってはたまらないものがあり、ただもうそれだけで最後まで一気に読んでしまえる気がした。何とも不純なる動機ながら、それでもとても心地よい読書時間を楽しんだのだった。ちなみにこの物語は、飯田譲治氏との共著『アナン、』上・下(講談社文庫)の子ども向けバージョンである。

 <夢の都>のごみ捨て場で、イエナシビトのナガレに拾われたキャラメル色の猫・バケツ(ぼく)。そうしてナガレとバケツは雪の降るクリスマスの日に、人間の赤ん坊を拾うことになる。“アナン”と名づけられた赤ん坊は、イエナシビト仲間のゲンさんやデンパちゃん、ギリコなどの協力ですくすくと育っていくように思われた。だがある日のこと、警察に追われる身となってしまい、<森の町>や<夢の島>へと旅立つことになるのだった。警察に追われて、町から町へと転々としてゆくナガレとアナンとバケツの行く先には、さまざまな出会いがあり、別れがあり、いくつもの悲しみや愛情に満ちたエピソードが、印象的に散りばめられてゆく。

 やがて、アナンは成長するにしたがって、不思議な力を備えていることがわかってくる。そして、人間でも動物でもアナンに魅せられてしまうのだ。中でも、並はずれた色彩感覚を発揮し、タイルでモザイクを作るアナンは印象的に描かれ、その作品がどれほどに美しく、人々の心を癒してゆくのかが際立って描写される。一方で、流れゆく年月は、アナンを見守るナガレやバケツ(ぼく)の視線のあたたかみを際立たせ、血の繋がりのない父と子、兄弟のような猫との関係の深さを感じさせる。人間と動物という域、ファンタジーの域をこえて、ただその結びつきにじんわりと感動する展開である。猫視点ながら、それを忘れさせる愛おしい思いがよぎる。

4048733230ぼくとアナン
梓 河人
角川書店 2001-12

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アナン、(上) (講談社文庫) アナン、(下) (講談社文庫)

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