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2007.11.24

猫ばっか

1010133_444ggrr わたしはよく泣く。たいていはひっそりと孤独に。ときには盛大に。そしてなぜか泣いているときに限って、傍には猫がいることが多い。慰めるわけでもなく、心配するわけでもなく、ただこちらをじっと見つめている。涙目でぼやけた視界からでも、はっきりそれとわかるのは、その眼孔の鋭さゆえに違いなく、わたしはその痛いほどの視線ではっと我に返るのだ。わたしは一体何を嘆いているのだっけ、と。こんなとき、猫が何を考えているのか切実に知りたいと思う。だから涙をふきふき、その鋭い眼孔を覗き込んでみるのだ。けれど、もう若くない眼は何かを語るようで、何も語ってはいない。ただじっと、わたしを見つめるばかりである。

 猫はただのペットにあらず。きっと猫を愛する人なら、そう思っている人は多いに違いない。猫という名称を超えて、猫を猫以上に思う。ときには人間と同類に。あるいは、人間以上に思うことだってある。佐野洋子著『猫ばっか』(講談社文庫)は、まさにそんな猫様々的な人には、たまらない一冊となっている。実用品としての猫、命の恩人としての猫、帰らぬままとなった猫、色気のある猫・・・様々な猫についてのエピソードの数々は、どれもこれもしみじみと猫との時間を思い出させるものばかりだ。文章と共に添えられたたくさんの猫の絵も、それぞれに味わい深く、思わずくくくっと笑ってしまう。究極の猫本という宣伝文句も頷ける。

 こうしてこの文章を書いている間にも、わたしの傍には猫がまあるくなって眠り惚けている。わたしが御主たちのことを、どれほど愛しているのかも知らずに…。ハロゲンヒーターで暖まった部屋の中、ふかふかの毛布に包まれて、当然のようにわたしのベッドを占領して。ときどき「くはぁ」とか「ううぅ」とか寝言をこぼしながら、実に甘い時間を過ごしている。わたしはその寝顔を盗み見ながら、気がつけばにんまりとして、また文章をしたため始めている。そうして思う。夕べの涙の理由など、もうどうでもいいことではないか、と。涙が乾いている今の、この“にんまり”が大事なのだと。わたしは再び猫を盗み見て、一人にんまりとする。

4062730790猫ばっか (講談社文庫)
佐野 洋子
講談社 2001-02

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