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2007.11.20

やがて目覚めない朝が来る

20071114_014 誰かがまた一人、世界から欠けてゆく。わたしの見知らぬところから。わたしの見知ったところから。そうしてまた一人、また一人と、この世界から誰もがいつしか欠けてゆくのだ。世の中の常として。さもあたりまえのこととして。だからこそきっと、永遠というものにしがみつけないわたしは、誰かが欠けゆくことにある種の執着を見せるのだろう。大島真寿美著『やがて目覚めない朝が来る』(ポプラ社)は、欠けゆく誰かの存在が印象的な物語である。主人公が回想するかたちで、たくさんの人々に囲まれた満ち足りた日々と、その中で悩みながら成長した姿、やがて訪れる人々との永遠の別れなどを、穏やかに慈しむように語られてゆくのだ。

 両親の離婚を機に、10歳より父方の祖母の蕗さんのところへ、母と共に移り住むことになった有加。嫁姑関係はおかまいなしに、蕗さんと母親は仲が良く、二人して有加の父親の不在を埋めるかのように舟ちゃん(父親)の話題に満ちていた。そして元女優の蕗さんの周囲には、いつでも賑やかに人々が集い、昔話に花を咲かせているのだった。そうして語られてゆく蕗さんの波瀾に満ちた人生や、それに関わる人々の人生に耳を傾けることに、有加は心地よさを感じていた。登場する人々は、いずれも甲乙つけがたいほどの魅力的な人物ばかりで、ときに有加の親以上に力になってくれるのだった。だが、そんな日々は永遠には続かない。続くはずもない。

 有加が成長してゆくに従って、当然のことながら周囲の人々は老いてゆく。老いばかりじゃない。突然の死だって訪れてしまうことがある。物語は、そんなひどく深刻になりがちな出来事を敢えて清々しく語ってゆく。それはもう、今を生きているからこその境地とでもいったらよいだろうか。悲しみに暮れるのではなく、今この一瞬一瞬を生きているといった、そのたくましさたるものに、ただただ圧倒されるばかりだ。そして、このたくましさにふと覚えがあることに気づく。あぁ、これは蕗さん譲りのものだと。いや、それとも蕗さんの周囲に集っていた人々一人一人の置き土産ではないかと。わたしは血以上の繋がりを、ここに見た気がしたのだった。

4591100014やがて目覚めない朝が来る
大島 真寿美
ポプラ社 2007-11

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コメント

ましろさん、こんにちは。
とても素敵な物語でした。死についてこういう描き方ができるんだなととても新鮮に感じました。

ましろさんも言われるように、血の繋がり以上の絆で結ばれた人たちでしたね。そういう関係が築けるのっていいなあと思います。わたしもいつか誰かとそういう繋がりを持ちたいものです。

投稿: まみみ | 2008.01.27 11:53

まみみさん、コメント&TBありがとうございます。
ほんとうに素敵でしたよね。
重たくなりがちなテーマをこんなにも清々しく描けるなんて、すごいです!
“繋がり”。わたしも同感です。
実際はなかなか難しいですけれども。
いつか。いついつの日か…そう願って止みません。

投稿: ましろ(まみみさんへ) | 2008.01.27 18:37

こんばんは。
皆が元気で笑っていた時間は読んでいて、本当に楽しそうでした。
有加の幸福だった人生の時間をともに彩った人びとが
終わりを迎えていく場面を敢えて明るく描いていたのが新鮮でした。

トラックバックさせていただきました。
でも、反映してないみたいです(涙)。

投稿: 藍色 | 2008.01.29 04:52

藍色さん、コメント&TBありがとうございます。
TB。無事に届いておりましたー。
ときどきココログは、すぐに反映されないみたいなのです。
ご心配おかけしました。

ほんとうに、明るく描かれていましたよね。
重たくなりがちなテーマだっただけに、わたしも新鮮でした。
有加の周囲にいた人々魅力もすごかったですよね。
この彩りが、もしや表紙に反映されているのでせうか。

投稿: ましろ(藍色さんへ) | 2008.01.29 10:24

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