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2007.11.22

群青の空に薄荷の匂い―焼菓子の後に

20061119_008_2 雲の切れ間からほのかな光が射し込んで、空がぱっと澄んだ青になる。そんな一瞬の出来事に、“青春”というものは似ている気がする。誰もが通過する一時。あの、目映いばかりの日々というものは。石井睦美著『群青の空に薄荷の匂い―焼菓子の後に』(ピュアフル文庫)は、そんなまさに青春真っ盛りの少女の物語である。どこにでもいるような、だけれど誰とも似ていない。ある一人の少女の。そこには、かつて少女だった誰もが抱えた思いによく似た感情が横たわっている。かつて少年だった誰かの思いだって、横たわっているかも知れない。そして、この一冊を読み終えた誰もが思い出すだろう。自分の特別な青春という日々についてのことを。

 主人公の亜矢は、小学校時代の忘れ去りたい過去やそれに伴う痛みを抱えながら、一見平穏な高校生活を送っている。そのことを知っているのは、中学からの親友の菜穂だけである。ある日、日課である散歩をしている時に、小学校時代の同級生・安藤くんと再会する亜矢。そして、少しずつゆっくりではあるけれど、亜矢の日々が動き始めるのだった。物語は、亜矢の心の傷に焦点を当てながらも、明るいタッチで高校生の恋愛についても描いてゆく。まるで、世の中まだまだ捨てたものじゃないよ、と励ますみたいに。乗り越えたと思っていた日々も、これからの日々も、決して無駄ではないのだよ、と教え諭してくれているみたいに。

 この物語、『卵と小麦粉それからマドレーヌ』の三年後を描いた作品なのだが、その時の亜矢の印象は、もっと芯の強い女の子のような気がしていた。亜矢の両親が離婚していること。かつていじめにあっていたこと。相当な文学少女であること等々、情報としてはわかっていたつもりになっていたのだけれど、今回主人公が菜穂から亜矢にバトンタッチしたことで、より二人のキャラクターの違いを再確認したわたしだ。そして同時に、亜矢という少女の成長を目の当たりにして、何だか妙にほっこりとなったのだった(もちろん、菜穂の成長にもびっくりさせられたけれど)。続編のある作品を読む楽しみは、こんなところに隠れていたのだなぁ。

4861764521群青の空に薄荷の匂い―焼菓子の後に (ピュアフル文庫 い 1-2)
石井 睦美
ジャイブ 2007-11

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