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2007.10.20

この人と結婚するかも

20070802_028 どきりとする。そうしてそれが、完全なるドキドキに変わるまでもなく、すぐさま思っている。“私、この人と結婚するかもしれない…”と。けれど、そのひらめいた可能性を行動にうつすわけではない。結婚を焦っているわけでもないし、早々と独身を貫こうなどと決めているわけでもない。これが、中島たい子著『この人と結婚するかも』(集英社)の表題作の主人公だ。少し奥手で、夢見がちで、微妙な年頃の。そんな複雑に揺れる現代女性の心理を描いている今作。著者の作品はこれまでずっと読み続けているが、今回は専門的な話が少なかったせいか、さらに読みやすい作品になっているように思う。他に男性版の勘違いを描いた「ケイタリング・ドライブ」を収録。

 主人公の“この人と結婚するかも…”的勘違い。読んでいてとても微笑ましかった。この人かも、あの人かも、はたまたそちらの人か…。些細なことにどきりとして、どきまぎして、なんだか妙に緊張してみたりして。たとえそれが一瞬のことであろうとも、誰かのことを懸命になって意識する。そういうときめきみたいなものが、たまらなく懐かしく愛おしかったのだ。こういう感覚、こういう心持ち。もしかしたらわたしは、ずいぶん長いこと忘れていたのかもしれない。主人公の行動や言動のひとつひとつに、今の自分の意識に欠けているものを、教えられたように感じたのだった。そして、思う。もっと、ときめきを。もっとどきどきを、と。

 他に収録されている「ケイタリング・ドライブ」は、「この人と結婚するかも」の男性版と言うべき内容の作品だ。“結婚”という発想にまでいかないあたりが、男女間の差なのかもしれないが、“もしかして俺に気があるかも…”と繰り返し主人公は思うわけである。その勘違いというべきか、女運のなさは、なんともあっぱれな感じがする。いや、彼の周囲にいる、気のある素振りを見せる女性たちが悪いというべきだろうか。同じ女性としては、少々心苦しさを覚えつつ…。主人公は車を走らせながら、“どうしてあの子は自分ではダメなのか”と長々と語るわけだが(しかも寄り道して目的地になかなか着かない)、その女々しさもやはり愛おしかったのだった。

4087748731この人と結婚するかも
中島 たい子
集英社 2007-09-05

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