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2007.08.11

卵と小麦粉それからマドレーヌ

20070811_009 どちらかひとつを選ぶのではなくて、両方という選択肢があってもいいと思った。それは決してあれもこれもと欲張るのではなくて、こっちがダメだからあっち、というのとも違う。自分の可能性を広げる意味合いでの、“両方”である。自分の気持ちを押しこめてやりたいことを諦めるのでもなくて、ただひとつきりのものにすがって生きるのでもなくて。何というか、ほんのりと肩の力を抜いた感じで、自分の在り方を模索する姿勢がいいなと思ったのである。もちろん、これだと決めたものがあることは、とても素敵なことだ。そういう生き方もある。けれど、他にも生き方はあるのだと、焦らなくてもいいのだと、教えられた気がしたのだった。

 石井睦美著『卵と小麦粉それからマドレーヌ』(ピュアフル文庫)。中学校に入学したばかりの菜穂は、クラスメイトの亜矢に“もう子どもじゃないって思ったときって、いつだった?”と話しかけられる。その問いにどう答えればいいのかわからない菜穂。やがて、亜矢が既に経験した試練に、菜穂もぶつかることになる。母親の留学宣言というかたちで。打ちのめされた菜穂に対して、亜矢は“変わるのはあなたよ”と言葉をかける。必死に自問自答を繰り返す菜穂の姿は、何だかとても微笑ましい。ティーンエイジャーの仲間入りを果たした悩める視線が、しっとりと丁寧に描かれてゆく。そして、じんと胸に響かせるメッセージを伝えてくれる。

 いわゆる変化の時、わたしはどうやって乗り越えてきただろうか。今となっては遠い記憶の彼方へ追いやられてしまった日々が、懐かしく思えてくる。もちろん、こうしている今だって、着々と変化を続けているに違いないのだけれど。自分自身ではどうにもはっきりわからない。ただわかるのは、ティーンエイジャーならではの濃密な時間は、もう訪れないということだけだ。20代には20代ならではの、30代には30代ならではの時間が待っているということ。わたしは、わたしならではの時間を過ごしてゆくだろうということ。そうして、あなたは、あなたならではの時間を過ごして、誰もがそれぞれに特別な日々を過ごしてゆくのだろう。

4861762820卵と小麦粉それからマドレーヌ (ピュアフル文庫)
水上 多摩江
ジャイブ 2006-03-02

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