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2007.08.12

ズームーデイズ

20070507_033 同じ重さだったはずの、ふたつの恋。どちらに依存するわけでもなく、どちらかを愛するわけでもなく。奇妙ながらそうやって、均衡を保っていたはずだった。けれどそれは、理屈の上でのことで、本当は違っていたのだ。だからときどき考えてみる。“だって私はどちらのことも愛していないし、どちらからも愛されていないんだもの“と。井上荒野著『ズームーデイズ』(小学館)は、既婚者との辛い恋と年下の男性との安らかな恋の狭間で揺れる、定職に就かない30代の女性の物語である。30歳からの7年もの恋愛は、忘れられないかけがえのない日々として、切々と綴られてゆく。その名も、ズームーデイズとして。これは年下の恋人の愛称・ズームーからきている。

 恋愛において微妙な立ち位置にいる主人公であるが、社会的に見ても、一人の女性としても、その立ち位置は変わらない。いや、変わらないどころかますます居場所のない立場に追いやられてしまう。とりわけ印象的なのは、主人公が親元で同棲を始めるあたりである。スイミングプールに通うことになった主人公は、そこで同年代の女性たちと知り合うことで愕然となるのだった。多くの女性は結婚していて、子どもがいる。そして彼女たちは、確かに“生活している”と。そこには、主人公がいくら繕っても繕いきれない決定的な違いがあったのである。生活するということは、何て困難なのだろうと、ひどく思い知らされる部分だ。そういうわたしも、胸が痛い。

 また、この主人公の依存的な傾向も印象に残る。あるときはスイミングに、あるときは美顔に、ズームーに、愛人になることに…と、とにかく事ある事に何かに夢中にならずにはいられないのだ。そこにわたしは、生活に対する焦りのようなものを感じて、自分のことのように苦しくなってしまった。主人公は結婚していない。定職にも就いていない。たった一人の人を選ぶこともできない。それでも、自分の進むべき道を一応は模索しつつ、今できることをしていた…わたしはそう思いたいのかもしれない。思うことで救われたいのかもしれない。主人公が救われるように祈るのではなくて。そして、こんなにも我が侭で身勝手な思いが、いつか報われるようにと。

4093861633ズームーデイズ
井上 荒野
小学館 2007-07

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コメント

ましろさん、こんにちは。ご無沙汰しております、Sachiです。

先日わたしもこの本を読み終え、感想を書いたので、久々にTBさせていただきました☆ この本、荒野さんの自身のことなのかなと思わせますね。

小池昌代さんの本も、すでに何冊か新刊が出ているので、いずれ読もうと思っています。そのときにはまたTBさせていただくかもしれません。

投稿: Sachi | 2007.08.22 15:36

Sachiさん、コメント&TBありがとうございます!
そうですね。物語設定といい、主人公の家族のことといい、
思わず井上荒野さんご本人を連想させますよね。
実際のところはどうなのでしょうか。
かなり気になるところです。

小池昌代さんの本、今回も素敵ですよ~。
Sachiさんがどんな感想をもたれるのか、
楽しみにしてますね♪

投稿: ましろ(Sachiさんへ) | 2007.08.22 16:55

はじめまして。「ズームーデイズ」を読んで少し書いているときに、ましろさんのページを見つけました。もし、よかったら、トラックバックさせてください。

投稿: Rosa | 2007.08.23 20:00

Rosaさん、はじめまして。コメント&TBありがとうございます!
そして、見つけてくださってありがとう。
今後もどうぞよろしくお願い致します♪

投稿: ましろ(Rosaさんへ) | 2007.08.24 17:44

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» 【本】『ズームーデイズ』井上荒野 [本と暮らしの日記]
7月に荒野さんの新刊が出るという情報を得て、すぐさま図書館で予約して心待ちにして [続きを読む]

受信: 2007.08.22 15:29

» [読書記録] [Casa de Rosa]
ズームーデイズ 作者: 井上荒野 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2007/07 メディア: 単行本  先日の「ヌルイコイ」に続いて、また、井上荒野さんの本を読みました。これは、おととい書いた「マジカル・ドロップス」と同じように、新刊コーナーにあって、何となく借りてき... [続きを読む]

受信: 2007.08.23 20:02

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