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2007.08.26

青年のための読書クラブ

20070811_005 時が流れても変わり得ない、或る“少女”という生き物のかたち。繰り返し、繰り返され、そうして続いてゆくわたしたちの種。たとえば、学校という名の閉ざされた乙女の園で、少女たちは集いその種を広げてゆく。ひそやかに。でも、確かな足跡を残しつつ。桜庭一樹著『青年のための読書クラブ』(新潮社)は、山の手の伝統あるお嬢様学校である聖マリアナ学園が舞台の、異端者ばかりが集う読書倶楽部の物語である。クラブには、名もない女生徒たちによって記録され続けている秘密のクラブ誌があり、そこには学園史上に残るはずの数々の事件が記されていた…。100年にも及ぶ学園の歴史を紐解きながら、少女たちの日々をまぶしく読んだ。

 タイトルにもあるように、この物語での少女たちの精神は極めて青年的である。仲間同士で<ぼく>を称して、甘い女言葉はほとんど使わないのである。そして、女の園という場所に身を置く者にありがちなように、恋愛に憧れつつも現実の異性にはひどく嫌悪している。そして、少女たちの中に意中の擬似王子を見つけたり、いわゆるエスという関係を大切にしたりしているのである。こういう女の園ならではの精神性みたいなものを、わたしはとても好ましく思ってしまう。なにを隠そう、わたし自身長く女子校にいた身。当時は、見事なまでにその雰囲気に呑まれ、周囲の少女たちに感化されたことは言うまでもなく、その精神性は今でもどこかで引きずっている。

 そして、この物語で忘れてならないのは、やはりクラブ誌に綴られている数々の事件が、文学作品に大きく関係している点だろう。「シラノ・ド・ベルジュラック」「マクベス」「緋文字」「紅はこべ」など、作品自体を知らずとも、思わずうっとりと身を漂わせてしまうのだ。もちろん作品を知っていれば、さらにこの物語を楽しむことができるに違いない。聖マリアナ学園に隠された秘密と、その行方に心躍らせながら、文学の深みにはまる展開なのである。時が流れても変わり得ない、或る“少女”という生き物のかたち。繰り返し、繰り返され、そうして続いてゆくわたしたちの種。願わくば、その種がいつまでも途絶えることなく続いてゆきますように。どうか、どうか。

4103049510青年のための読書クラブ
桜庭 一樹
新潮社 2007-06

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コメント

ましろさん~こんばんは!
素敵な装丁、そしてこの世界観。すっかり魅了されました。
私、女子高だったのでこの雰囲気が懐かしくてだからより一層
楽しめたのかもしれません。
古典ものをさらりと登場させてしまう著者のセンスの良さにも
うっとりでした。
かつて少女だった私たち。でもその片鱗はいつまでも持っていたいですね。
いつまでも忘れずに…。

投稿: リサ | 2007.08.29 20:15

リサさん、コメント&TBありがとうございます!
お、リサさんも女子高でしたか。
わたしも6年間中高一貫校で過ごしたので、
とてもこの物語の雰囲気が懐かしかったです。
当時はあまり、その雰囲気が好ましくなかったんですけれどね。。。
今ならもっと楽しんで、その雰囲気に染まることができるのに…。
あの頃は実に若かった…
ホントですよね~。いつまでも忘れずに少女の面影を持ち続けませう!

投稿: ましろ(リサさんへ) | 2007.08.30 16:42

ましろさん、こんばんわ!
私も女子高に通っていたせいか、この世界、
妙に懐かしくて一気にひきこまれました。
ほんと、少女というのは時が流れても変わらない生き物なのですね。
それにしても、異形であった読書クラブの少女たちが
永遠の少女だったのは、何だかうれしかったです。
私もいつまでも少女の面影、持ち続けたいと思ひます。

投稿: june | 2007.08.30 20:15

はじめまして。
こちらの記事にトラバさせていただきました。
私は女子高ではなかったので雰囲気はみなさまほどには…でした。
流れていく時代の中でも続いていく永遠の少女性が、
桜庭さんという書き手によって花開いた印象です。

コメントやトラバ返しなどいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。

投稿: 藍色 | 2007.08.31 02:25

juneさん、コメント&TBありがとうございます♪
この世界の雰囲気、はたして男性には理解できるのでしょうか。。。
男性読者の方に聞いてみたい気がします。
そう、異形だった少女たちが永遠の少女なるものだった…
その結末は、嬉しいと同時に心憎いくらいの演出でしたよね。
いつまでも読書を通じて、わたしたちも繋がっていられたらいいのに…
そんなことをふと思いました。

投稿: ましろ(juneさんへ) | 2007.08.31 15:30

藍色さん、はじめまして。
コメント&TBありがとうございます♪
こちらこそ、今後は遠慮なく、どんどんお願い致しますね。
わたしもそちらにお邪魔させていただきます☆
普段なかなか手を出さないタイプの作品に手を出したら、
読書仲間が増えて、なんだかとても嬉しいです。
どうもありがとう。
少女性、いつまでも大事にしましょう。
だって、女ですもの。

投稿: ましろ(藍色さんへ) | 2007.08.31 15:35

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