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2007.06.24

魔女ジェニファとわたし

20070624_018 本当の自分というもの。それを見出すことの難しさを、感じなくなったのはいつの頃だろう。いや、感じなくなったというよりも、考えなくなったという方が正しいかもしれない。はたと気づけば、自分探しという課題を忘れ、子どもから大人のつもりに変化していたわたしだ。未だ大人になりきれていない部分は多々あるものの、それでも月日はかまわず流れるもので、児童文学の主人公に懐かしい感情を呼び起こされてばかりいる。E.L.カニグズバーグ著、松永ふみ子訳『魔女ジェニファとわたし』(岩波書店)もわたしをそういう心地にさせてくれた1冊であり、本当の自分をひた隠しにして、小さな世界で友人関係に苦悩していた頃のわたしを呼ぶようだった。

 この物語の主人公エリザベスは、転校してきたばかりだというのに、新しい友だちができないまま過ごしている。“自分は他の子と違う”という意識が芽生えていたエリザベスは、裏道の林を通って学校へ一人で行く。これは、日本の集合住宅地を思わせる舞台設定からすると、かなり冒険的なことだ。たとえ、エレベーターでクラスメイトと会っても、一人で行くのだから。ある日、エリザベスは一人の少女ジェニファと出会う。自分を魔女だと自称するジェニファは、学校でただ一人の黒人であることが後半でわかるわけだが、彼女もまた孤独な存在であった。二人は密やかに親交を深め、魔女になるための様々な修行をする。あくまでも、魔女とその弟子としての関係上で。

 物語の端々には、黒という色の使い方や魔女に纏わるいろいろなエピソードなど、興味深いところがたくさん登場しているのだが、わたしが注目したのは友人関係という部分だった。エリザベスとジェニファの関係は、いわゆる“ごっこ遊び”の中だけにあり、本当の個としての付き合いが、エンディングでやっと始まるからである。出会い、付き合い、ようやく真の付き合いが始まる、というわけだ。二人は12歳。ちょうど思春期である。この難しい時期を、二人は互いの存在によって乗り越えてゆくと言っていいだろう。大人でも、たくさんの友だちでもなく、たった一人の友の言葉や行動に影響されて。これは少数派かもしれない。でも、とても貴重な関係であるだろう。

4001140845魔女ジェニファとわたし (岩波少年文庫)
E.L. カニグズバーグ
岩波書店 2001-05

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