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2007.06.20

ぼくと(ジョージ)

20070226_007 もう一人の自分というもの。それを心の中に置いておくこと。外側の自分と内側の自分とに、矛盾を感じること。思春期の頃はいつだってそういうことに悩まされて、自分自身のあるべき姿を模索していたように思う。E.L カニグズバーグ著、松永ふみ子訳『ぼくと(ジョージ)』(岩波書店)には、まさにその心の葛藤が鮮明に描かれている。思春期とは、とても混乱をきたす時期とされるが、そのモヤモヤした感じとか、イライラした感じとかいうものを言語として表現するのは容易なことではない。それゆえ、大人になってしまうと、自分自身にとって思春期がどんなものであったのかを忘れてしまうのであろう。物語に登場する大人たちのように。

 6年生のベンジャミン(ベン)は、勉強のよくできる、手のかからない子。そんなふうに周囲から思われている。両親は離婚し、母親と弟と暮らしていて、家事をよく手伝ういわゆる“よい子”として、母親も認識していた。長期の休みになれば、離れて暮らす父親の元に行かせるなど、すっかり安心しきっていたのである。だが、ベンが思春期に突入したことを、大人たちは気づいていなかった。もちろん、本人さえも自覚していなかっただろう。ベンにはこの時期助けとなるはずの、大人も友人もいなかったのである。だが、ベンには物心ついた頃から、ジョージというもう一人の自分がいた。ベンは内なる声の助けを借りて、様々な困難を乗り越えてゆこうとする。

 物語に登場する大人たちは、思春期のベンによかれと思って、様々なことを持ちかける。ベンとジョージが会話するところを聞いてしまったベンの父親の再婚相手は、すぐに病気の名前を持ち出して精神科を勧める。また、早々と二重人格を疑う大人もいる。そんな早とちりの余計なお節介の中で、ベンはジョージと自分たちなりのやり方を貫き、思春期を乗り越えることになるのである。カニグズバーグの作品は、子どもの気持ちをくみ取り、困難から多くのことを学ばせてくれる。そして、成長を促してくれる。この作品に限らず、他の著書でも、通じているこの描き方は、子どもが大人へと向かう上で大きな助けとなってくれるような気がしている。

4001141493ぼくと〈ジョージ〉 新版 (岩波少年文庫 149)
松永 ふみ子
岩波書店 2008-01

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