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2007.06.03

クローディアの秘密

20070526_036 ひたひた。わたしにとって美術館のイメージは、いつだってひたひた、である。ぶ厚い静けさに包まれ、かすかな息づかいと靴音だけが響く空間。音の響きはどこかしめやかで、反響して靄をつくる。そこに漂う緊張感。そういうものに呑み込まれるようにして、恐る恐る脚を進めるのが好きなのだ。E.L.カニグズバーグ作、松永ふみ子訳『クローディアの秘密』(岩波少年文庫)は、かの有名なメトロポリタン美術館の登場する物語である。この物語は、児童文学にありがちな思春期の少女と少年の冒険と謎解き、彼らの成長という設定ながら、大人をも引き込み夢中にさせる。そして、語り手のあたたかな眼差しを通じて、柔らかな気持ちにもさせてくれるのだ。

 少女クローディアは4人姉弟の一番上。両親への怒りをため込み、弟を誘って家出をすることになる。行き先は、メトロポリタン美術館。美術館にこっそり紛れこんで生活する内に、天使像に魅了され、その秘密を探ってゆくという、ストーリーである。ここで面白いのは、家出をしていることも何もかも忘れて、天使像に夢中になる2人。やがて、天使像の秘密を知ることが彼らの目的へと変化してゆくのである。美術館でのはらはらさせる展開や、彼らの微妙に変化してゆく心理。そして、何より自分がどんな大人になれるだろうかという、大きな疑問に対する複雑な思いが印象的である。戸惑い、悩み、揺れに揺れて、誰もが成長してゆくことを改めて思う。

 カニグズバーグの作品は、登場人物がユニークなこと、現代的な視点で描かれていることで有名である。この「クローディアの秘密」は、1960年代に書かれたのにもかかわらず、そのリアリティは今でも古さを感じないに等しい。現代を見る眼差しは大人も子どもも関係なく描かれ、ただ子どもをヒーローやヒロインにするのではなく、大人の協力なしには叶わなかったのだと思わせる展開がよく見られるのが印象的である。どの大人もすべてとは言わないが、大人が尊敬すべき相手であることという、道徳的な教えもやんわりと含んでいるのだろうと思う。また、とりわけ思春期の少年少女たちを描いていることに関しても、注目すべきところだろう。

4001140500クローディアの秘密 (岩波少年文庫 (050))
E.L.カニグズバーグ
岩波書店 2000-06

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コメント

ましろさん。こんにちは。
美術館に泊まるという、この大胆な家出。
終わりかたが気に入っています。
いつの間にか2人が‘家出’そっちのけで謎解きに夢中になる姿が
かわいらしいです。

気に入った美術館を1度独り占めしてみたいな。

投稿: sayano | 2007.06.03 21:30

sayanoさん、コメント&TBありがとうございます!
わたしもこの物語の結末、好きです。
素敵な経験をした2人を羨ましいと思うくらいに。
美術館は大好きな場所なので、
近々出かけてみようと思ってます。
独り占め…夢でもいいからしてみたいです。

投稿: ましろ(sayanoさんへ) | 2007.06.04 17:43

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