ヒメママ
ふっ、というため息混じりの笑いと、和やかな気持ちと。わたしの中の揺るぎない個というものが、蠢いた気がした。確固たる個。それも生涯を貫くほどの個。誇り高き精神で我が道をとことんまでゆく、個に。単なる我が侭と言ったらそれでおしまいだが、憎みきれない愛すべき個なのだ。曖昧で揺らぎやすいわたしにとっては、サクッと読めるのにしぶとく余韻を残す、玖保キリコ著『ヒメママ(1)』(マガジンハウス)は、侮れない作品だったのである。自己中心的、我が侭、身勝手…この作品でいうところの個は、一般的にそう解釈されるかもしれない。けれど、思うのだ。わたしもきっと、そうだろうと。誰しもきっと、そうだろうと。ただその配分が違うだけで。
ヒメママ。つまりは、誇り高きお義母さん。日々さまざまな騒動を起こして、家族を悩ませる。贅沢と美しいものが好きな、乙女である。そして、自分が掟という、世の中の人々をデフォルメした存在と言ってもいいだろう。多かれ少なかれ、誰もが自分のことで頭がいっぱいなのだし、もしかすると忙しい自分に酔っている人もいるかもしれない。作品の中では、ごくごく普通の家庭を舞台に設定されているために、一人だけが浮いているわけだが、よく考えてみると、ある意味子どもは皆姫や王子であるに違いなく、ヒメママの周囲の人々だってヒメママ的要素がないとは言いきれない。そう、わたしだってヒメママ度は結構なものになるに違いないのである。
このヒメママ。それでも、憎みきれず可愛いところもあるものだから、憎みきれず、むしろ愛すべきキャラクターなのだ。ごくごく普通の暮らしを好むヒメママの息子は、既に諦めモードであるが、手探り状態の嫁の奮闘は実にリアルだったりする。そして周囲は皆思っている。このヒメママの不幸は、やはり本物のお姫様ではないことに尽きると。生まれるところ。人は皆それを選べない。そして、死をもそれに近い。作品のテーマは、シリアスなシーンを散りばめながら、それをコメディへと向かわせてゆく。宣伝文句の“爆笑漫画”というのとは、ちょっと異なる魅力満載の作品であるとわたしは思っている。読んだら屹度、誰ものヒメママが疼き出すはず。
- 玖保 キリコ
- マガジンハウス
- 1050円
書評/
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コメント
ましろさん
ご無沙汰しています。竹蔵です。
相変わらずすごいスピードの更新ですね。脱帽。
キリコさんの漫画、懐かしくてコメント書かせてもらっています。
大昔ですがキリコさんの作品で「いまどきのこども」という漫画があって、その中に”竹蔵”が出てきます。私のハンドルネームの由来です。竹蔵君が気に入った我が家では、その頃初めて買ったフォードのフェスティバという車に竹蔵という名前を付けていました。竹蔵くんは会社の総務の女の子に売られていってしまいましたが、竹蔵の名前は私の分身として今も残っています。
だからどうした?という話ですが。。。
竹蔵
投稿: 竹蔵 | 2007.06.22 12:51
竹蔵さん、コメントありがとうございます。
わたしも「いまどきのこども」、読んでました!
というか、それしか読んでいなかったのですが、
某所の献本でいただけることになって、最新作を手にした次第です。
久しぶりにキリコさんの漫画を読めて本当にラッキーでした。
“竹蔵君”、結構波瀾万丈な人生ですね。
そして何より、竹蔵さんのHNの由来がわかって、
とても嬉しい気持ちになりました。ありがとうです。
投稿: ましろ(竹蔵さんへ) | 2007.06.22 20:20