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2007.06.08

スコーレNo.4

20070526_028 ゆるやかな、くねくね道。わたしにとっての理想の人生は、この言葉に終結する。幸せの絶頂期なんていらないから、穏やかなほどほどのあたたかさを胸に日々を過ごすのである。もちろん、それとは意識せずに幸せな道をゆくのであるが…。宮下奈都著『スコーレNo.4』(光文社)は、そのまさにわたしの理想的な、ゆるやかなくねくね道を描いた作品である。少女から大人の女性へと成長する過程。それを繊細な筆致で切り取ってゆく。家族、姉妹、恋愛、仕事。そこで生じる様々な葛藤と鬱屈するもやもや。拘り、愛おしさといもの。近くて遠い、そんな等身大の主人公の物語は、心の奥底にじわっとくる何かを伝えてくるようである。

 No.1からNo.4からなる物語は、中学時代、高校時代、大学・社会人時代(営業)、社会人時代(事務職)と分かれている。主人公は、骨董屋の3姉妹の長女である麻子。とびきり可愛い次女とは双子のようにして育ったものの、彼女に対するコンプレックスはなかなか根強い。人並みに恋もするけれど、妹の容姿を思うと腰が引けがちな麻子である。そんな彼女が家を離れた大学生の頃から、少しずつ逞しくなってゆくのだ。とりわけ、社会人になってからは、遅咲きながら隠れていた才能が芽を吹き出す。見えなかったものが見えてくる。わからなかったことがわかってくる。するするとほどけてゆく麻子の心情が、とても愛おしく感じられる。

 わたしはこの物語を、ただ単純に好きだなと思えた。主人公麻子が語り手で、そこに焦点を当てて描いているけれど、もちろん麻子にとっての重要人物たちも豊かに息づいている。麻子はこんな人々に囲まれて生きてきたのだなということが、ありありと伺えるのである。いい人ばかりじゃなくて、でも悪い人ばかりでもなくて。長く続いてゆく関係と、疎遠になる関係があって。愛おしいものが増えて、拘りが芽生えて。失うものもあって。あぁ、生きてゆくって、こういうことだなと、素直に頷けるのだった。わたしのゆるやかなくねくね道はいずこへ…と心配に思いつつ、読後感がとてもよかった本に出会えた幸運に、ほんのりと甘えてみた。

4334925324スコーレNo.4
宮下 奈都
光文社 2007-01-20

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コメント

特に大きな事件が起こったり、激しい恋愛が描かれたりしなくてもこういうすてきな物語は紡げるんだ…と教えてくれた作品でした。
宮下さんはこれが一作目ですが、このクオリティを保ったまま今後も書き続けていただきたいものです。また追いかけたい作家さんが増えました。

投稿: まみみ | 2007.06.09 09:50

まみみさん、コメント&TBありがとうございます!
わたしも追いかけてゆきたい作家さんになりました。
いいですよね~、ホント。
アンソロジー『コイノカオリ』で注目していたのに、
ずいぶん読むのが遅くなってしまいました…。
要チェックせねば。

投稿: ましろ(まみみさんへ) | 2007.06.09 20:46

あれ?うちのほうでは「TBできませんでした」とメッセージが出てたのに、できている。すみません、二度打ちしてしまいました。
お久しぶりです。この作品は、よくよく考えると予定調和の出来すぎたお話のような気がしないでもないのですが、でも、それを跳ね飛ばす丁寧で真摯な、そして爽やかな物語であったと思います。
うむ、うむ。よい、よい。です。

投稿: すの | 2007.07.06 14:52

すのさん、コメント&TBありがとうございます。
TB。トラブル続きなのですよ…なぜなのでしょう。
同じココログ同士でもなかなかうまくゆかないことが多いんです。はて。
そうですね。言われてみると、予定調和の物語だったかもしれませんね。
でも、そんなところもまた気に入ったわたしです。
ホント、よいよいです!

投稿: ましろ(すのさんへ) | 2007.07.21 07:43

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「スコーレNo.4」宮下奈都(2007)☆☆☆☆★ ※[913]、国内、現代、小説、女性、半生、青春、人生 ※もしかしたらネタバレ含む(?)あらすじあり。未読者は注意願います。 まず、☆は甘めで四つ。決してすごく素敵だとか、構成がうまいとかそういう作品ではない。さりげなく心の琴線に触れた作品。小品の一冊。頑なで、そして不器用な主人公の姿が気持ちよい。おだやかに優しい気持ちで読み終えることのできた作品。 スコーレとは学校のこと。オビによれば「人生には四つの小さな学校(スコーレ)..... [続きを読む]

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