« 遭難、 | トップページ | クローディアの秘密 »

2007.06.02

スカイラー通り19番地

20070528_029 ふっと光を閉ざした雲を、あの頃のわたしはひどく憎んでいた。怒りを向けるべき先を知らず、何もかもが信じられず、頑なに僅かな正しさを選んだつもりでいた。正しさの定義すら知らずに。子どもの世界も大人の世界も関係なく、ただわたしにできるすべてをと。幼いながらに見つめた正しさは、わたしを通じていびつに広がっていったけれど、決して後悔などしなかった。今だってわたしは、どこか自分自身を信じている。わたしなりに正しかった、と。E.L.カニグスバーグ著『スカイラー通り19番地』(岩波書店)を読みながら、憎んだ景色を思い描いていた。ちょうど今頃の、初夏。そのぎらつく日射しを遮った厚い雲を。その雲の色を。あの頃のわたしを。

 物語は、思春期の12歳の少女の視点で描かれてゆく。両親といられず、大好きな大叔父兄弟のところにもいられず、いやいやながら長期のサマーキャンプに参加したマーガレット。はじめて参加したキャンプで、マーガレットは同室の少女たちにいじめられ、孤立してしまい、問題児とみられるようになってしまう。そんな中、連絡を受け救い出そうと迎えにきてくれた大叔父。やがてマーガレットは、夏休みの間なぜ大叔父のところにいられなくなったのかを知ることになる。そして、様々な人に協力してもらい、大叔父を助けるために、子どもの社会から大人の社会へと挑んでゆくのだった。挑む方法は異なっても、マーガレットは子ども時代を代表するヒロインに違いない。

 この物語の魅力と言ったら、登場人物のユニークさだろう。マーガレットの参加したキャンプで用務員として働いている校長の息子は、生徒たちの前とそうでないときの自分を使い分け、マーガレットの天井に大きな薔薇の絵を描いてくれる。また、マーガレットに甘い大叔父兄弟は、口喧嘩が絶えず頑固でしたたか。他にもユニークな登場人物が多数登場している。そして、物語に絡んでくるアウトサイダーアートも印象的である。現代を見据える芸術。これからも続くだろう街の歴史というもの。移ろいやすい人間のスピードをゆるめるかのようにして、そこにあるように思える。マーガレットが開いた扉は、厚い雲を押しのけて、わたしに光を示してくれた気がするのだった。

4001155745スカイラー通り19番地
E.L. Konigsburg 金原 瑞人
岩波書店 2004-11

by G-Tools

にほんブログ村 本ブログ←素敵ブログ、いっぱい。
もしもお気に召しましたら人気blogランキングへ…

|

« 遭難、 | トップページ | クローディアの秘密 »

58 海外作家の本(アメリカ)」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

全集を買ってしまうほど好きな作家さんです。
毎回子供が主人公なんですが、どの子もたくましくてかっこいい!
そしてサポートする大人がまたいいんですよね。
話の展開も本当に読めなくて、緻密な構成にいつもうならされます。どの作品もはずれがないので、ましろさんにはこれからもどんどんと読んでもらえたらいいな…と思います^^

投稿: まみみ | 2007.06.09 09:45

まみみさん、コメント&TBありがとうございます!
全集買われたのですね!!!わたしも切に欲しいです。
すっかりはまってしまっております。
児童文学って、奥が深いものなのだな…と、
今頃になって気づきました。
はい、どんどん読みますね(笑)

投稿: ましろ(まみみさんへ) | 2007.06.09 20:43

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55029/15292086

この記事へのトラックバック一覧です: スカイラー通り19番地:

» 「スカイラー通り19番地」 E.L.カニグズバーグ [今日何読んだ?どうだった??]
スカイラー通り19番地posted with 簡単リンクくん at 2005.12.16E.L.カニグズバーグ作 / 金原 瑞人訳 / 小島希里訳岩波書店 (2004.11)通常24時間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る... [続きを読む]

受信: 2007.06.09 09:43

« 遭難、 | トップページ | クローディアの秘密 »