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2007.05.20

紺極まる

20070520_028 本当に欲しいもの。早くからそれを知っていることは、とても恵まれている。いろんなものに目を奪われて、移ろいやすかったわたしの10代は、そう嘆いているような気がする。遠回りをしてきたことに後悔はないけれど、あまりにも素直じゃなかったことを思うと、今になっても心残りである。長野まゆみ著『紺極まる』(大和書房)の真木は、その点、自分の本当に欲しいものをよくわかっている。それも、あの曖昧模糊とした恋愛において。若さゆえに、その思いは揺らぎもする。でも、還ってくる場所というものを、ちゃんと自ら心得ているようにわたしには感じられたのだった。それに加えて、何とも甘美な日々を送る真木。複雑な思いと共に、耽読した作品だ。

 物語は、仲介業者に騙された予備校講師の川野の視点で描かれてゆく。ふとしたことから、予備校生の真木の家に居座ることになった川野は、朝夕と家を空ける真木を不審に思いつつも、なかなか新たな部屋に移ることができずにいる。そんな時、真木の兄がやってきて、川野の心は次第に真木を違った視線で見るようになってゆく。物語の端々では、礼儀作法や姿勢の美しさなど、細やかなところに目が向けられていて、妙なくらいに奥ゆかしい雰囲気が漂い、甘美さが際立っている。もともと同性愛には抵抗のないわたしだけれど、こんなに美しく描かれるのなら、いっそ手に入らないならせめて、こうであって欲しい…と思ってしまうくらいだ。

 この作品、どうやら他の作品の続編だったようで、真木が好意を寄せている浦里がメインの物語があるらしい。そちらを先に読むべきだったのか、“浦里”という名前が出てきたあたりでは、真木との関係がなかなか見えてこなかったのだけれど、物語を読み進めるうちに、真木とはこういう少年なのか、こういう環境で育ってきたのか、こんなふうに考えるのかと、徐々に人柄そのものが浮き上がってくるようで、興味深く読んだ。ちなみにこの物語、「紺極まる」「五月の鯉」「此の花咲く哉」の3つからなっている。それぞれ違う年齢の真木少年が読めて、さらに彼への興味がわいてくる展開だ。まだまだ続きそうな予感を秘めながら、ページを最後にするところもいい。

4479650083紺極まる
長野 まゆみ
大和書房 2003-12

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