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2007.05.04

I’m sorry, mama. アイム ソーリー、ママ

20061207_006_1 戻れない行先を、彷徨いながら進み、すべての扉を閉ざされて、卑屈に生きざるを得なかった人がいる。たった一人きりで。想いのすべてを押しこめて。彼女に罪の意識はない。次々にさらっと人を殺める。どこまでも残酷に。どこまでも冷血に。孤独の中にすとんといる。桐野夏生著『I’m sorry, mama.』(集英社)は、そんな主人公、アイ子をめぐる物語である。とある夫婦の焼死事件。その背後にある、アイ子の存在。盗み、殺人、逃亡を繰り返す彼女を、見逃せなくなる展開だ。アイ子の出生の秘密、それを読み手が知るとき、じわっと熱いものが込み上げ、タイトルのあまりにも悲しい響きに、言葉をなくすかもしれない。なんだか無性に、この世界を憎みたくもなった、わたしだ。

 この物語の中で気になったのは、アイ子の視点で描かれながら、その思考が極端に少ないところだ。始終、何をするにも直感を頼りにしている印象が残る。そのため、アイ子という女性を、どこか非人間的にしてゆくのだ。だから、他に登場する人物たちの(ある意味で人間的な)熱っぽさがかえって目立ち、アイ子の冷酷さをさらに強く印象づける。もちろん、周囲の人々が善人だとは言い難いのだが、細かなところに注目してゆくと、人間誰しもどこか悪の部分を持っている、と言える。そう、わたしも自分で気づかないところで、悪を吐き出しているかもしれないのだ。そんなふうに考えてゆくと、人間という生き物そのものが、恐ろしいものだと思えてくるのだった。

 ここのところ、著者の本を続けて読んでいるわたしだけれど(これで4冊つづいている!)、読まず嫌いの作品は多数ある。気が向いたときに、さあっ、と読んでみると、思い込みだったのだ…と身に染みる思いが疼いてくるから不思議だ。今の自分が何を求めているか知ることで、気の合う本と出会えたり、いろんな自分自身を知れたり、その他未知なることを知れたり、様々な効果がある気がする。たまには毛色を変えて、ただただ読書に耽るのもいい気分転換かもしれない。今後はもっと素直な心持ちで、苦手なものを克服してゆきたいと思っている。定期的に訪れる、読めない日々が明日にでもくるかも知れないが。今時点のわたしは、読む気満々でいる。

4087747298I’m sorry,mama.
桐野 夏生
集英社 2004-11

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コメント

ましろさん☆こんばんは
桐野さんが描く女の怖さって独特ですよね。
わたしは、自分のことを追求されているような気持になって読んでいることが多いです。
女って嫌だなぁと思いつつも、目をそらすことができないんです。
ミロ・シリーズも是非読んでみて下さいね。

投稿: Roko | 2007.05.04 22:52

Rokoさん、コメント&TBありがとうございます!
ミロ・シリーズがあるのですね。
まだまだ読み始めたばかりの作家さんなので、
これからいろいろ読んでみようと思っています。
オススメありがとう。

投稿: ましろ(Rokoさんへ) | 2007.05.05 21:32

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