ひまわりのかっちゃん
出会いは人を変える。ときにはよい方へ。ときには悪い方へ。それでも出会いの1つ1つは、かけがえのない奇跡のようなもので、わたしたちを様々な方向へと導いてゆく。西川つかさ著『ひまわりのかっちゃん』(講談社)は、そんなある出会いの物語である。特殊学級にいた少年が、一人の教師に会ったことで成長を見せる展開は、ぐっと噛みしめて読まなければ、涙がこぼれ落ちそうになるほど、悔しさとあたたかさと優しさを一度に感じさせるものだった。かっちゃんの心の変化や感じ方というものは、あまりにも繊細で傷つきやすく、思わずぎゅっと抱きしめたくなるほどに愛おしい感覚でもあった。そして、笑ったり泣いたり。そうやって人は成長してゆくものなのだと、改めて思うのだった。
物語の前半は、かっちゃんを虐げる人々の様子が印象的だ。特殊学級というところに出入りするかっちゃんを「はんかくさい」と言い、周囲の視線はなんだかとても冷たく感じられる。もちろん、そこにはかっちゃんを心配し、愛するがゆえの悲しみみたいなものが渦巻いていたのだと思う。けれど、かっちゃんの「なぜ」や「どうして」にちゃんと応えてくれる大人は、そこにはいないのだった。それでもかっちゃんは、自分なりに言ってはいけないことを心得ていて、一人奥歯を噛みしめるようにして涙する。心の声は、いつだって何かを感じて叫んでいるのに、どうしたらいいのかがわからない。そういう感覚というものは、少なからず誰しも経験あることなのかもしれない。
小学5年生の春。かっちゃんは引っ越すことになり、一人の教師と出会う。とてつもない情熱とユーモア溢れる教え方をする、なんとも頼もしい教師と。ひらがなさえも、簡単な計算さえもできなかったかっちゃんを、たったの2週間あまりの期間で変えることになるのだ。よく人は無闇に「頑張れ」や「頑張る」という言葉を使う。けれど、どうして頑張るのか、どうして頑張らなければならないのか、その意味を教えてくれる人はなかなかいない。勉強することのメリットさえも、知らぬままに学んでしまったわたしにとって、この物語の先生の1つ1つの言葉が、心に染み入るようだった。かっちゃんと寄り添うように、丁寧に。そして、自ら実践して示す、そんな教師だったのだ。
また、かっちゃんとライバル関係のようになってゆく、友達の存在も印象的だ。互いを高め合い、刺激し合う。そんな関係は、かっちゃんにとっては初めてのものだったに違いない。その関係を導いてくれたのもまた、教師であり、たった一人の出会いが、多くの出会いを見出してくれたと言ってよいだろう。大人になった今でも、振り返ることのできる過去があること。それも特別な出会いというもの。人生を変えゆくそんな出会いというものがある著者が、なんとも羨ましくなるのは、わたしだけではないはずだ。この物語を読んで、きゅうんと胸を締めつけられるのは、わたしにもまだ救いが残されているからだろうか。いや、あるに違いない。そう信じてみるのも悪くないと思うのだ。
- 西川つかさ
- 講談社
- 1365円
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