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2007.03.14

パルタイ

20050227_9999014 ぽつぽつと降り出した雨のほのかな熱を、心の奥底で感じた気がした。まだ何の混ざりものもないくらいに透明なそれは、するりと染み込み、淡くも確かなしるしを残してゆく。いつか乾くことに怯えながら、じわじわとスピードを上げて。ときどき、傷を腫らすように。じくじくっと染みゆくのだ。倉橋由美子著『パルタイ』(新潮文庫)は、わたしにとってそういうイメージを呼ぶ作品だった。確かな感性を含む内省的な語り。そこにある、若者の過剰な自意識とそれによる羞恥心、孤独、不毛なる行為の数々による虚しさなどを、冷ややかな視線で捉えてゆく。そして、そんな深い憎悪の感情は、在ることを否定し、存在そのものへの恥を痛いほどに感じさせる。

 表題作「パルタイ」。ドイツ語で党を意味するこの言葉は、物語の象徴と言えよう。パルタイに属する<あなた>のすすめによって経歴書を作成し、それが受理されると、今度はパルタイから出るための手続きをはじめようとする、そこまでの過程が描かれている作品だ。ここでの不毛な性愛や、身も心も拘束されることの滑稽さは、現実離れしつつも、どこか読み手に危機感を与える。普段何気ないことながら繰り返す、強がりのようなもの。或いは、自分を省みて思うことの核。その何とも言えぬ恥ずかしさを、じんじんと痛感させられる内容なのだ。そして、内容は違うものの、他の4編にも通ずる匂い、雰囲気が、始終漂って心を揺さぶるのだった。

 細かなことはわからない。でも、わたしが感じるのは冒頭のような“ぽつぽつと降り出した雨”であり、その透明さやほのかな熱であった。まだ様々なことを受容する余裕を持ちながら、透明さを保ち続ける色。それでいて、淡くも確かなしるしを読み手の心に残すような、そんな描き方。そこには純粋に心から感動を思わずにはいられない。なんといったらよいのか、とにかく心を動かすのだ。その動きの核となる部分、人の精神というものまでも強く激しく揺るがすようなものなのだ。感性だけじゃない。それ。つまりは知的にも美的にもとんだそれ。その創造の世界、エネルギーというものに、わたしは多分圧倒されたのだと思う。強く。とても強く。

4101113076パルタイ
倉橋 由美子
新潮社 1978-01

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コメント

パルタイ面白そうですね
猫の写真を見てエドガーアランポーの黒猫を思い出しました。

投稿: tak | 2007.03.15 01:31

takさん、コメントありがとうございます!
猫がお好きのようで、猫狂いのわたしにとって、嬉しい限りです。
またぜひ覗きにいらしてくださいませ。

投稿: ましろ(takさんへ) | 2007.03.15 15:26

読書好きです。
が、今、本が溢れていて何がいいのか。。。
ただ、売れてるから読みたいのか・・・・
そんなんじゃなくて、素直に感動できる本に出会いたいと
思っています。

猫ちゃん大好きで今も猫ちゃん5匹飼ってます。
本の情報と猫ちゃんの写真も見れるなんて素敵なブログに
出会えた気がして今わくわくしてます。
じっくりブログの中を散策したいと思います。

投稿: りんご | 2007.03.16 16:44

りんごさん、コメントありがとうございます!
本当に世の中には本が溢れています。
でもわたしは、売れている本って、苦手だったりするんです。
だからこのブログは流行りにのれていません(笑)
もしよろしければ、本選びの参考になれたら嬉しいです。

猫。お好きなのですね。5匹とは!!!びっくりです。
うちも3匹だったりしますが。犬もいますが。。。
今後もどうぞよろしくお願い致します。

投稿: ましろ(りんごさんへ) | 2007.03.16 18:37

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