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2006.12.21

オリベ

1010131_img マイペースを貫くこと。その困難さは、日常の中で幾度も痛感する。休日のまどろみの邪魔をされたとき。誰かと連れ立っての買い物のとき。一人じゃないときの食事のペース。くつろぎ方。些細なことから、人としての在り方やマナーに至るまで、様々なことがマイペースではいけないと、忠告しているかのようである。けれど、南Q太著『オリベ』(マガジンハウス)は、マイペース万歳と敢えて唱える一冊なのである。色気ゼロでもよし。テンション低めでもよし。めんどくさがりでもよし。コタツから出られなくてもよし。楽ちんな格好でもよし…云々。もう、とにかくオリベのすべてが超マイペースなのだから。だが、一つだけ注意しておこう。マイペースは決して、怠惰ではないのだと。

 わたしが心惹かれてしまったオリベは、読書するときのオリベだ。彼女は古本屋を利用し、文庫本をこよなく愛する。そして、なんとも慈しむように夢中になって読み耽るのだ。けれど、あまりにも夢中になって興奮してくると、なぜか掃除をしたくなってしまう。一段落してまた、黙々と読むものの、やはり読み終えるのが惜しくなって掃除してしまう。という、一石二鳥の読書術を知っているのだ。す、すてき。読んでいるうちに眠くなり、ついうたた寝してしまうわたしとは、まるで違うではないか。生活と密着した読書。これこそが、本物の読書スタイル。いや、新しい読書スタイル。これなら部屋は、いつでもさっぱりしたきれいさを保っていられるはず…と、都合のいいことを思うわたし。少々情けない。

 また、落ち込むときのオリベもいいのだ。人はそれぞれ、落ち込み方やその対処方法が異なる。誰かにぶちまけてさっぱりしたい人もいれば、どこまでもとことん落ち込んで立ち直る人もいる。一人きりで抱え込んで胃をキリキリさせる人もいるだろう。オリベの場合、落ち込むままにまかせてしまい、たまにはくよくよするのもいいかもしれないと思い、綿棒を手に自分と向き合う。執拗に耳を掻いて。その光景は、なんだか小動物みたいで可愛いのだ。わたしときたら、「オリベったらもう…」と、既に友だち扱いである。まさにマイペース。オリジナルを行く人である。そういえば、わたし自身の落ち込み方も、ある意味特殊といえば特殊かもしれない。ただ当の本人が気づかないだけで…。もしかしたら、あたなも…。

 それから、この『オリベ』の中で注目のしどころは、登場する小道具の数々だろう。やはり雑誌『オリーブ』から生まれた漫画だけに、乙女としたら見逃せない部分が多々ある。いくら、オリベに色気がなくても、テンションが低めでも、めんどくさがりでも、そこはやはりチェックせねばと思うのだ。ちなみに、本でいうならば、ビリー・レッツ『ビート・オブ・ハート』、桐島洋子『渚と澪と舵 わが愛の航海記』、シェル・シルヴァスタイン『おおきな木』、桐野夏生『柔らかな頬』などである。なぜか文春文庫ばかり…。普段ならわたしは絶対に手を出さないタイプの本たちであるけれど、オリベが読んでいたとなると、つい読書熱が疼いてくる。恐るべし、オリベ。あなたはただものではない。

4838716567オリベ
南 Q太
マガジンハウス 2006-04-20

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コメント

オリベ良いですねー。
先日、人にスポーツをすると良いと勧められて、親切心なのだろうけど
テンション低めなことを責められているようで、もっと活発になれと
言われているようでちょっと落ち込んだ。
家に帰ってから夫にいかに自分は悪くないかということを切々と訴えて
うんうんと頷かせ、落ち込みから立ち直りました。
あ~、オリベのようにマイペースに生きたいわ~。

投稿: ちもたん | 2006.12.20 17:58

ちもたんさん、コメントありがとうございます!
はい。とってもいいですよー、オリベ。
マイペース万歳。わたしも負けないくらいにマイペースなのだけれど、
どうにも周囲にはちゃんとわかってもらえていない気がしてます。
切々と説明しているちもたんさん。きっと、可愛いんだろうなぁ(笑)
のんびりほっこりしたいとき、オススメですよ。
でも実は、漫画はあんまり読まないわたしデス。

投稿: ましろ(ちもたんさんへ) | 2006.12.20 18:10

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