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2006.11.24

虹伝説

20061124_030 ざわめきの中で、色が目覚める。やがて、色は声をあげる。そして、色が満ちる。満ち溢れる。騒々しさからはかけ離れた、広い大地で。圧倒的な存在感で。誰も何も侵せないほどの強さを保って。そう、その色は褪せることを知らない。どこまでも深く、どこまでも濃い。どこまでも強い色なのだ。それも、ときには意思を持つような。ウル・デ・リコ著、津山紘一訳による『虹伝説』(小学館)には、そういう色の物語が描かれている。これはそう、滲むことを知らない、虹。薄れることさえも知らない、虹。消えることさえも知らない、虹。そんな強い虹の物語だと思う。とにかく、この色彩は強い。記憶からこぼれることさえも、決して許しはしないくらいなのだった。

 物語は、虹を食べる7色の鬼たちが、虹を求めて谷を目指すものの、やがて滅びゆく様を描く。森には彼らが虹を食べ尽くしたせいで、すっかりその姿を消していた。虹の生まれる谷を除いては。だから、彼らはもちろん、腹ぺこだったし、虹を食べるためならば、もはや手段を選ばないほどにまで達していた。だから、そこを目指すわけである。7色の鬼たちは、虹の生まれる谷の洞窟で悪巧みの相談をする。そして、夢を見る。虹色の汁を食べ尽くす夢を。色に満たされる夢を。けれど嵐の後、彼らの悪巧みは、予想もしなかった方向へ展開してゆくのである。そう、悪巧みはざわめき。その中で色は目覚めた。やがて、声をあげた。そうして、満ち溢れたのだった。ありとあらゆる、そこら中に。

 この作品。実はわたし、まだ文字が読めなかった頃から知っている(初版本)。母に読み聞かせられ、やがて自ら進んで読み、親しんだ一冊である。だからこそ、忘れられない一冊であり、思い入れもひとしおの一冊なのだった。何よりも印象的だったのは、この作品に満ちる色彩だ。色というものに意思があり、色というものが確かに存在感を放っていることに気づかされた、最初の記憶だったように思う。7色の虹というものが、手に届かないゆえん。その奥に秘められた物語を、ここで初めて知らされたように思うのだった。本来色は、混ざり合うことを知っている。けれど、ここでは色はただ一つの色として、独立してその色を放っているのだ。生きている色、とでも言うべきか。そういう強い色なのだった。

 生きている色。それは決して手に届くものではない。だからこそ、伝説。だからこその、物語なのだろう。けれど、著者のウル・デ・リコは、それを操るすべを知っている人のように思う。色を慈しむ人だからこその、表現。それを知っているのだと思わせるほどに。赤を赤として、橙を橙として、黄を黄として、緑を緑として、青を青として、藍を藍として、紫を紫として。そうして、その色たちを混ざり合わせずに、その色をその色のまま、描く。物語る。だから、色は命を吹き込まれたかのように目覚める。声をあげる。満ちる。そこら中に満ち溢れて止まらない。誰にも侵せない領域で、生きる。確かに生きている。そんな気がするのだ。そして、呼ぶ。記憶の中で、いつまでも疼くように。

4093940231虹伝説
Ul de Rico 津山 紘一
小学館 1997-05

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コメント

元裁判官の方から聞いたのですが、裁判官の服の色が黒いのは、これ以上何色にも染まらないからだそうです。何色にも染まらずに、裁判官としての良心に従って判断するということです。

ひねくれものの僕は、しかしながら、こういう解釈もなり立つのではないかと思います。

①これ以上何物にも染まらないということは、それ以前に随分色んな色に染まってきた経験があるのではないか

②腹黒いから、衣装屋が黒い服を薦めたのではないか。

そこで提案なんですが、被告人の心も明るくなるように、裁判官に虹色の衣装を身につけて判決を読み上げて貰うというのはどうでしょう?

サーカスと間違えられてしまうかもしれませんが・・・。

投稿: るる | 2006.11.25 00:08

るるさん、コメントありがとうございます!
確かに黒は、それ以上何色にも染まりませんよね。
そして①は、必要不可欠かもしれません。
裏には②があるでしょうけれども…(笑)
わたしは、まっ白なのもアリかなと思いましたよ。
やはりサーカスに間違えられるのはよくありませんし…。

黒は言葉なしでも、圧倒的な存在感がありますよね。
喪に服す色でもありますし、なんとなくじゃなくても、
かなりの威厳がある。そんな気がします。
色に頼らずとも、良心があるにこしたことはない、ですけれども。

投稿: ましろ(るるさんへ) | 2006.11.25 21:58

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