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2006.11.25

白い虹の伝説

20061124_011 どの色に染まりやすくも、自分の色を保ち続けることができる色。つまりは、いろんなものを吸収し、自分の糧にできる色。それが白という色のような気がする。たとえ、虹色に加わることができなくとも、闇に排除されようとも、その白はこの世界に満ちている。そう思わせる物語が、ウル・デ・リコ著、寮美千子訳『白い虹の伝説』(小学館)である。『虹伝説』の続編として描かれたこの作品は、前作よりもやわらかな色づかいで、淡く霞がかった印象を受ける。色が主張しない。それなのに、色は確かに在る。不思議と光と影とを意識させられる。色の持つ魔力のようなものに包まれながら、わたしたちは白に魅せられる。魅せられながらも、胸に疼く痛みを知るのだ。

 物語は、虹を食べる七匹の鬼たちの亡き後の世界を描いている。実はこの鬼たちには、末っ子に白いゴブリンがいたのだった。白いゴブリンは、どんな色をも食べることができたのだったけれど、虹は七色ではなければならないという理由から、一族から忘れ去られていた。白いゴブリンは、北の果てでまっしろな雪だけを食べて暮らしていたのだった。たったひとりきりで。そんな中、兄たちの無様なる死の知らせを聞いた白いゴブリンは、色に満ちた世界を目指して南へと向かうのだった。そして、そこで目にしたあまりにも美しい光景を目にして、闇のゴブリンたちを導こうとするのだ。少しばかりの悪と、ほんの少しばかりの善とを持って。それは、新たなる光の世界への危機にも繋がるのだが。

 白いゴブリン。彼は果敢にも、ひとりきりで闇のゴブリンたちを動かした。闇のゴブリンたちの欲望は果てしなく、留まることを知らなかった。それは、白いゴブリンの想像を超えていたのだった。そう、闇にいたゴブリンたちは、あまりにも長い時間光を知らずにいたから。ひっそりと暮らすことしか知らずにいたから。色のない世界にいたゴブリンたちには、色がもたらす力を知らずにいたから。欲望は人を掻き立てる。いい意味でも。悪い意味でも。それが、分かれ道。そこが、白いゴブリンと闇のゴブリンとの違い。わたしたちのいるこの世界にもある、人それぞれの違い。だからこそ、人は争い、失うものから目を背けようとする。そんなところに重なる自分がいることが、ひどく怖い。

 わたしたちが、いや、世界が平和であるためには、この世界を知る必要があるような気がする。どれほど目を背けたくなる光景が広がっていても、ちゃんと見なければならないのだと思う。同時に、美しいものを美しいと思わなくてはならない気がする。正しいことを正しいとも、思える人間で在らねばと思う。そう、逃げてはいけない、とも思う。でも、言葉で云うほどに容易なことでないことは、充分に知っている。実際問題として、この世界が平和だとは云いにくい。嫌なニュースばかりが耳に届く世の中がある。聞きたくないことばかりが溢れる、世界がある。知りたくないことばかりが溢れる、世界がある。悲しいかな、それが現実だけれど、それでもなんだか愛おしい現実もある気がするのだ。

409394024X白い虹の伝説
ウル デ・リコ Ul de Rico 寮 美千子
小学館 1997-05

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コメント

はじめまして。
トラコミュ「大人の読む絵本」にTBしてくださり、
ありがとうございました(^^)
喜び勇んでエントリーを読みに参りました!!

「白い虹」という表現にとてもひかれました。
のけ者にされたいた、白いゴブリンが、世界に復讐(?)をする
というようなストーリなのですね。

色のなくなった自然に色を取り戻すというのは・・・
いったいどのようにストーリーが展開していくのか気になります。

機会があれば手にとって読んでみたいと思います。

ましろさんのブログ、たくさんの本が紹介されていて、
とても勉強になります。

では、またどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: 旭ひなた | 2006.11.29 01:44

旭ひなたさん、はじめまして。
コメントありがとうございます!
素敵なトラコミュを作ってくださって、とても嬉しくて、
ついTBを送ってしまった次第です。

小さな頃に、「虹伝説」を読んで、
続編の「白い虹の伝説」を読むきっかけになりました。
大人になってから読む絵本には、いろいろ感慨深いものがありますよね。
過去の記憶。それと今が繋がる瞬間もあったりして。
「虹伝説」は絶版らしいのですが、図書館にはあるかもしれません。
もしよろしければ、ぜひ読んで色を楽しんでくださいませ。

旭ひなたさんのブログに、わたしもお邪魔しますね。
今後もどうぞよろしくお願い致します!

投稿: ましろ(旭ひなたさんへ) | 2006.11.29 17:23

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