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2006.10.19

わかってほしい

20061003_99022 いつか見た赤。鮮やかすぎるその色は、悲鳴をあげていた。その色を見たときから、その痛みを感じ、わたしはそこから動けなくなった。立ちすくんだまま、ただ胸が震えた。そして、声なく泣いた。堪えきれなかった。そこから逃げるように、ぎゅっと目を閉じた。作MOMO、絵YUKOによる『わかってほしい』(クレヨンハウス)は、わたしをそうさせた1冊である。虐待。そこに深く根づく、愛というもの。この絵本はそんな心の悲鳴を見事なまでに描いている。また、虐待とは全く関係のない人々にとっても、痛いところを突く部分が多く見つけられるはずだ。誰もが思う言葉「愛されたい」。その重みを、その痛みを、どうかわかっていて欲しい。自覚して欲しい。そんな願いが読みとれる。

 はじめて書店で見かけたときに、わたしはこの本から逃げた。虐待とそこに深く絡みつく愛情とを描いたこの絵本が、あまりにも痛かったからだ。そして、わたしの遠い記憶をも、思い出させたからだった。それは決して、虐待の記憶ではないのだけれど、わたしにとっては似たようなものだった。ただ、認めて欲しかった。ただ、抱きしめて欲しかった。ただ、いい子だと褒めて欲しかった。つまりは、愛されたかった。そんなたわいもないことである。それでも、小さな痛みはいつしかふくらみを増して、大きなものへと変化することがある。とりわけ、傷つきやすい子どもならなおさらだ。大きな声。怒鳴り声。それだけでも怖い。恐ろしい。どうかやめて、と思う。叫びたくなる。

 それでも、幼いということは、なんとも弱いものである。思っていても言えない。伝えたくても伝えられないのだ。そこですれ違ってしまう人と人。そして、どこかで隙間が生まれてしまう。それは次第に目に見えるほどにまで広がって、どこまでも深く痛みとなって残ってしまう。いつまでも。深く。奥深くに。目に見えないかたちをして。或いは、目に見えるかたちとして。確かな傷となって。でも、これは主観の問題でもある。とらえ方次第では、こんなことにはならない。なんのことはない、ただの日常に終わってしまうことでもある。軟弱だとか、根性がないだとか、甘えているだとか。そんな一言で片づけてしまう人もいるだろう。ではなぜ、悲しみの中にいる人が存在するのだろう…?

 虐待に関して言うならば、連鎖だ。虐待をうけた子どもが親となり、自分の子どもを虐待する。相反する自分と戦いながら、それでも虐待してしまう。繰り返してしまう。なんとも恐ろしい連鎖である。間違っている。でも、止められない。その衝動。その悲しみ。そして、そこで犠牲となる子ども。いつまでも続く連鎖…その悪循環。人は皆、誰もが愛情に抱かれて育つわけではない。だからこそ、愛というものは尊い。だからこそ、愛というものを希求する。愛されたい一心で。心があるからこそ、求める。求めるからこそ、傷つく。でもこれもまた止められない。わたしたちはきっと、愛されたくて生まれたはずだから。愛されたくて生きているはずだから。もしかしたら、そうでない人も、いるかもしれないけれども。

4861010179わかってほしい
MOMO
クレヨンハウス 2003-12

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コメント

いつか行った施設の人が話していたことを思い出す。
大人は嫌な事から逃げ大変だとか苦しいとかイロイロ言うけど
純粋な子供たちは自分が悪くなくても自分を責め
何も言わずただただ小さな体で耐える。って。
温もりを求めていたあの子を抱きしめる事しかできなかった。
あの子が経験した痛みを直視できる強さがなくて
その本から私は今も逃げてしまっているのです。

投稿: ユエ | 2006.10.20 01:18

ユエひめ、コメントありがとう!
わたしもきっと、直視はできていないと思う。
今でも逃げられるものなら、逃げてしまいたいくらい。
でも、必然的に大学で勉強せざるを得なかった…
それでもかなり、逃げてしまったのだけれどね。
可愛いクマの絵が、どんどんボロボロになってゆくのは悲しいけれど、
でも、この絵本はいろいろ考えることができる。
心に余裕があるときにでも、そっと手にとって欲しいです。

投稿: ましろ(ユエさんへ) | 2006.10.20 06:19

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