« ハヅキさんのこと | トップページ | 可愛い女 »

2006.10.25

いたずらハリー きかんぼのちいちゃいいもうと その3

20050527_44198 自分がいい。自分でよかった。だれかを羨むのではなく、そんなふうに思えることは、とても容易いようでひどく困難だ。羨む。すなわち、“恨む”という感情も含まれたこの言葉は、わたしが最近一番避けたい言葉の1つでもある。ドロシー・エドワーズさく、渡辺茂男やく、酒井駒子え、による『いたずらハリー きかんぼのちいちゃいいもうと その3』(福音館書店)では、まだ幼い少女よって、そんなことを気づかされる。ずっと追いかけてきた全3巻のシリーズも、これでおしまい。とてつもなくきかぼのちいちゃいいもうとに、もう振り回されずになるのかと思うと、少し寂しさを覚える。だからわたしは、彼女がきっと、素敵なレディに成長することを願って、大事に読んだ。1つ1つのエピソードを。

 いたずらハリー。彼は、ちいちゃいいもうとの親友である。前作『おとまり』にも、ちらっと登場したのだけれども、彼女に負けず劣らずの、きかんぼ少年である。しかも、彼女とはなかなかよいパートナーシップを発揮して、思わずふふふっと笑みがこぼれてしまった。自分の誕生日パーティーだというのに、ちいちゃいいもうと一緒に、悪巧みを計画するし、そうかと思えば、さまざまな遊びを思いついては、意固地なまでに自分を主張する。けれど、それは、彼なりの理論上ではきちんと成立していて、憎めないのである。ちいちゃいいもうとに関しても、それはいえることなのだけれども。子供はこれくらいじゃなきゃ…なんて思うまでに至ってしまう、読み手であるわたし。このきかんぼぶりが好きなのだ。

 この作品の中で印象的だったのは、小さな子供の想像力の果てしなさ。もう、大人の年齢になってしまった者としては、頭が下がるくらいのものである。さまざまな状況下において、なんでも遊びに変換してしまうことなど、わたしにはもうできない。いや、むしろ、子供の頃から、そういうことに関しては苦手な方だった気がするのだ。だから、写実的な絵は描けても、想像で何かを描くことなどちっともできなかったし、率先して遊びの輪の中に入ることもできなかった。わたしはたった1人ぽつんと取り残されて、みんなを眺めては先生と話して過ごすような、内気な想像力に乏しい子供時代を過ごしてばかりいたのだ。そう、つまりは遊ぶすべを知らなかったのだろう。

 それでも、わたしはわたしらしく日々を過ごし、歳を重ねてきた気がしている。わたしは他でもない、わたしであるからこそ、生きているのだから。きかんぼのちいちゃいいもうとだって、そのことを無意識ながら知っているはずなのだ。それは、この作品の結末が語っている。そして、そのきかんぼぶりに振り回される周囲の人々だって、そう思っているに違いないのだ。だって、あんなにも愛おしく接することができるのだから。叱りながらも心配して、抱きしめて、いい子じゃないところまで愛してくれる。語り手の姉の口調にも、その愛しさは満ち溢れている。たった1人きりの、きかんぼのちいちゃいいもうとに他ならず、きっとわたしたちも皆、たった1人の誰かにとっての存在なのだと思いたい。

 ≪このシリーズに関する過去記事≫
  『ぐらぐらの歯 きかんぼのちいちゃいいもうと その1』(2006-03-26)
  『おとまり きかんぼのちいちゃいいもうと その2』(2006-06-14)

いたずらハリー きかんぼのちいさいいもうと その3 おとまり―きかんぼのちいちゃいいもうと〈その2〉 ぐらぐらの歯―きかんぼのちいちゃいいもうと〈その1〉

もしもお気に召しましたら人気blogランキングへ…
にほんブログ村 本ブログ←素敵ブログ、いっぱいです。

|

« ハヅキさんのこと | トップページ | 可愛い女 »

23 酒井駒子の本」カテゴリの記事

59 海外作家の本(イギリス)」カテゴリの記事

69 アート・絵本」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

酒井駒子さんの絵が好きで、このシリーズを手に取りました。
酒井さんの描く四頭身の子供は、この世界にやってきてまだ沢山時間を過ごしていない者の放つ生と死が立ち上るかんじが漂っていていつもハッとさせられます。
頼りなくて、柔らかくて、何となくこわいのですが、このシリーズはいつもは酒井さんが使われない色が使われているので、とても作品に合っているなあ、と思います。

投稿: 牧場主 | 2007.08.11 13:14

牧場主さん、コメントありがとうございます!
わたしも酒井駒子さんの絵が好きで、
この本のシリーズを手に取ったクチです。
可愛らしいようで、奥深いメッセージを感じますよね。
現在、安曇野絵本館でちょうど酒井駒子さんの絵本原画展をやっていて、
行きたくて行きたくてうずうずしているわたしです。

投稿: ましろ(牧場主さんへ) | 2007.08.11 16:31

おお、そうなんですか、見に行きたいなあ。
長野かぁ・・・・・・以前、スタシス・エイドリゲビチュスという絵本作家の絵を見に行った記憶があります。
私の住んでいる所はとても暑いので、また涼しいあの安曇野へ行って、そばとか、アイスとか食べたいなぁ。
私は、酒井駒子さんの挿絵では、「オオカミ族の少年」の二巻が好きです。
ましろさんは「きかんぼのちいちゃい・・・・・・」シリーズ以外では、どれがお好きですか?
もし、美術館に」行かれるなら、お好きな絵があるといいですね。

ところで、福永武彦の「死の島」がユーズドで2200円ですって?
にゃふ~、高いッスね。

投稿: 牧場主 | 2007.08.12 18:58

牧場主さん、コメントありがとうございます!
安曇野へ行かれたことがあるのですね。
わたしは一度しか行ったことがないので、
また行ける日が来ることが待ち遠しいです。

酒井駒子さんの挿絵では、「赤い蝋燭と人魚」が一番好きです。
でもやっぱり、まるごと酒井さんが手がけた「金曜日の砂糖ちゃん」でしょうか。
他にも「こうちゃん」も捨てがたいですし…(笑)
とても1つには絞りきれないです。
「オオカミ族の少年」もとてもいいですよね!

投稿: ましろ(牧場主さんへ) | 2007.08.13 13:11

わぉ~、私も「金曜日の砂糖ちゃん」「こうちゃん」「赤いろうそくと人魚」あげたかったんですよ、一つに絞るなら、「オオカミ族の少年」の二巻なんですけど。(今、三巻を読んでいます)
「赤いろうそくと・・・・・・」では、黒の使い方が特に素敵ですよね。
このあいだ「その歌声は天にあふれる」を読みましたがそれも黒が素敵なんですよ。
「ヨアキム」もいいし、うーん・・・・・・

投稿: 牧場主 | 2007.08.13 18:56

ホントにわぉ~!!!ですね。
実はちょうど「夜の鳥」「ヨキアム」を読んでいるところなんですよ。
表紙しか知らなかった「その歌声は天にあふれる」も、
さっそく今度読んでみようと思います。
これ、すっごく美しい表紙ですよね。改めて、うっとりです。
黒の使い方も、とても印象的ですし。いいなぁ、本当に!
9月に入ったら安曇野絵本館に行く予定なので、
それまでにいろいろ勉強(?)しておこうと思います。

投稿: ましろ(牧場主さんへ) | 2007.08.14 06:00

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55029/12422544

この記事へのトラックバック一覧です: いたずらハリー きかんぼのちいちゃいいもうと その3:

« ハヅキさんのこと | トップページ | 可愛い女 »