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2006.07.14

猫の本 藤田嗣治画文集

20060712_003 藤田嗣治と言えば、乳白色と猫だ。白という色に魅せられて、なおかつ猫狂いであるわたしにとって、その組み合わせは何とも素晴らしいもの。藤田嗣治の作品とは、我がためにあるのではなかろうか…などと思う程に惹かれる。とてつもなく強く。もどかしさに呑まれて、目をそらすことが惜しいくらいに。いつか手元に画集を、と思いつつも欲しい画集が盛り沢山ゆえ、なかなか実現できそうにないので、図書館にて念願の『藤田嗣治画文集 猫の本』(講談社)を借り出した。まるまる2週間パラパラとページをめくる。めくるたびに、深いため息をつく。はっとする。想いが震える。鼓動の速度が変化する。愛おしい。なぜ、こんなにも愛おしい?わたしは自分に問うてみたくなったのだった。

 “猫の本”というだけあって、約90点にも及ぶ猫の画が収録されており、特に以前出版された画集には未収録作品がメインである。これは、ファンにはたまらないセレクトだろう。思わず、ふふふっと笑みをもらすことしばしば、のわたし。モデルとなった猫たちはなんと130匹。どの猫たちもその存在感は圧倒的だ。裸婦と猫の作品に至っても、やはり目を向けてしまうのは猫の方である。どれほどの美しい裸体にも、乳白色にも、猫の気品には勝てない。そう思ってしまう。どれほどまでに隅っこに描かれようとも、猫にはかなわないのだ。その描き手である藤田嗣治の自画像においても、それは変わらず、ほんの少し肩から顔を覗かせるだけで参ってしまう。猫とはなんとすごい生き物なのだろうと感心するばかりだ。

 けれど、例外もある。少女と猫をモチーフに描かれた作品である。少女の目は、猫の目のごとく見開かれ、その存在を深く脳裏に刻ませる。まるで、少女と猫とが互いの目を交換したかのように映るのだ。正真正銘の少女という生き物もまた、猫とよく似た天性を持ち合わせているのかも知れない。少女という、その僅かばかりの時期だけの特別な何かを。藤田氏は、この画文集の中で言っている。“女はまったく猫と同じだ。可愛がればおとなしくしているが、そうでなければ引っ掻いたりする。御覧なさい、女にヒゲとシッポを附ければ、そのまま猫になるじゃないですか”と。なるほど。そう思いつつもわたしは、やっぱり猫の方がよいのでしょう?女よりも少女の方がよいのでしょう?もちろん、一番は猫なのでしょう?と問いたくなるのだった。

 さて、猫好きの藤田氏。そのツボをしっかり心得ていらっしゃる。特に、わたしが心奪われた猫の姿は、喧嘩のときのものだ。何匹もの猫たちが威嚇し合い、低い体勢になり、今にも飛びかかりそうな瞬間。しなやかな肢体をフルに動かして、一気に跳ねるその丸み帯びた背。鋭い目をして牙をむく、その野性的な部分。「猫(争闘)」においては、猫の舞いのごとく、野生があまりにも美しく描かれており、闘いが連鎖して広がり、一体いつまで猫たちは舞うことを止めないのか…などという心配までしているわたしに気づく。嗚呼、なんという猫狂い。まったくもって、猫贔屓である。そして、もう一つ書き残すべきこと。藤田氏のあの髪型には、かなり深い意味があったのですね。わたしのぱっつん前髪とは、格も品も知性も違うのでありました。

4062118440猫の本―藤田嗣治画文集
藤田 嗣治
講談社 2003-07

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コメント

良いですよね~。藤田氏の描く猫。
先日の国立東京近代美術館での展覧会で、本物を見ました!
ましろさんの気に入った絵もありましたよ♪すごい迫力でした。
まるで、絵から飛び出してきて、ひっかかれるんじゃないかと・・・にゃお。
藤田氏は、華やかな顔の裏に、悲しい人生を背負った画家さんだということを、この展覧会で知って、とてもとても好きになりました。
猫って、そういう人に寄るような気もします。
猫好きの私が言うのも何ですが。

投稿: こもも | 2006.07.15 16:02

コメントありがとうございます!
おっ、こももさんもお好きでしたか。
本物もご覧になったのですねー♪羨ましいです。
藤田氏については、まだ知らないことが多いので、
近々画意外の書物作品も読んでみようと思っています。
悲しいものを背負う…わたしにもあてはまてしまっている気も…
嗚呼、なんという猫狂い!!!

投稿: ましろ(こももさんへ) | 2006.07.16 13:55

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