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2006.06.09

一度死んでみますか? 漫談・メメントモリ

20060605_44006 “メメントモリ”死を忘れるな。わたしたちの本能や良識は、いつのまにか壊れゆく。個人差はあれども、常に身近なところに死が潜んでいることなんぞ、あまりに遠く曖昧にぼかされているように思える。“メメントモリ”死を忘れるな。その言葉を基調として、愉快にも真摯に語り伝えてくれるのが、島田雅彦/しりあがり寿著『一度死んでみますか? 漫談・メメントモリ』(PHP新書)である。実力派作家でわたしの大好きな島田氏の博識さと、人気漫画家である、しりあがり氏のなんともシュールな世界観。この2人の組み合わせと一瞬ぞくっとするこのタイトルに惹かれれば、もうすっかりはまってしまう。生きること、老いること、いずれは死ぬこと。それらを愉しむことのできる1冊である。

 おぉ、なるほど。この本を手にした人は皆、そう云うだろう。いや、云うに決まっている。40代のオヤジたちの言葉は、どれもこれもが頷けるのだから(20代のわたしまでも)。死の話が思わぬ方向へと進みつつも、鋭い矢を忘れない2人。寺山修司の言葉“ぼくは不完全な死体として生まれ 何十年かかかって完全な死体となるのである”を用いて、死の重みを問う。寿命が延びたとて、青春が長くなるわけもなく、老人でいる期間が多くなるだけ。思えばそこに、希望などはない。人は生まれたときからずっと、じっと死にゆく。人の営みそのものは、死のためにあるのか。死に近づきたくなる者がいるのはなぜなのか…語りのテーマは実に重い。なのに、可笑しさ満載な2人のコンビネーションがいい。

 先に出た“人の営み”というもの。それは、たいがいにおいて退屈なものである。死にたがる人たちがいる一方で、生きようとする人たちがいる。したたかに。しぶとく。根を張りめぐらせて。健康番組が多いことしかり、流行りのダイエット方法しかり。体にいいこと。即ち、もがき足掻く退屈な営み。それをやりたがる人たちが、世の中にはいるのだ。そして、わたしのように、“さっさと死にたいけれど、生かされてしまっているから、夏に向けてダイエットをしなくっちゃいけないしぃ…”なんていう人種も多い気がする。なんという都合の良さ。人生に対する甘さ。その精神の気怠さは、生きづらい者の典型とも云えるのかもしれない。重みの比重が知らぬまに狂い、バランスを欠いた人たちがいっぱいなのだ。

 この本の中で語られている話題で一番心惹かれたのは、“机上旅行”なるもの。旅が好きで世界中をかけめぐる人々は多いが、期待を膨らませ過ぎたあまりに、実際には大した感動もなかった、なんていうことがある。その点、“机上旅行”ならば、ガイドブック片手に期待だけを抱えたまま旅することができるのだとか。それから、もう1つ。伝統ある地震国としての日本の在り方について語られた部分も印象的だ。島田氏としりあがり氏がそこで話題にするのは、トイレ問題と備蓄用食糧問題。実際に、これはかなり現実的な問題である。被災者の心のケアも大事だけれど、本当に必要なのは不幸の中で見つける楽しみのノウハウじゃないか、なんてことまで語られる。嗚呼、愉快。でも大真面目に思う。生きる術を学ぼう。いや、もっと学ぶべきだと。

4569647278一度死んでみますか?―漫談・メメントモリ (PHP新書)
島田 雅彦
PHP研究所 2006-01

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コメント

この本面白そうですね~。
読んでみたいです。

投稿: るる | 2006.06.10 15:02

るるさん、コメントありがとうですー!
面白いですよ。ざっくばらんに世相を斬ってまする。
オヤジたちに惚れてしまいそうです。

投稿: ましろ(るるさんへ) | 2006.06.10 23:01

昔、
「結局死ぬんだから、どう生きたって無意味」
ってよく思ってたから、ちょっと気になるタイトル。読んでみたくなるな~
ちなみに
今は生きる術を学んでるとこ、かな?

投稿: ひろ | 2006.06.21 23:20

ひろさん、コメントありがとうー★
わたしも日々、生きることについての想いが変化している。
不思議なくらいに積極的になってみたり、消極的になってみたり…
これは新書だけれど、愉快に読めますよ。

投稿: ましろ(ひろさんへ) | 2006.06.22 06:17

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