« 銃とチョコレート | トップページ | 花のようなひと »

2006.06.14

おとまり きかんぼのちいちゃいいもうと その2

20060531_44021 “きかんぼ”であること。わたしはそれについて、歳を重ねるほどに失いゆくものであると思っていた。期間限定の、甘い言葉で囁いて誘ってくるお菓子みたいなものであると。けれど、ドロシー・エドワーズ著、渡辺茂男訳、酒井駒子画による『おとまり きかんぼのちいちゃいいもうと その2』(福音館書店)を読んで、この“きかんぼ”が歳を経てもなお、続くものであることを知った。やわらかに日々を過ごしつつも、ゆずれないものが1つでもあること。それはまさに“きかんぼ”の証拠だ。さまざまなものに揺られて、流されて。そういう生き方もよい。それでも1つきりくらいは、ゆずれないものを持ち得たい気がした。イギリス幼年童話の傑作シリーズは、これで2冊目。あと1冊でおしまいなのが、心なしか寂しい。

 シリーズ1冊目同様に、姉がいとおしい妹について語る形式。それがなんとも美しい姉妹愛で、語り手である姉をはじめとし、周囲の大人たちも含め皆、“きかんぼ”な妹が可愛くて可愛くてたまらない様子。2冊目のはじまりは、その“きかんぼ”ぶりが生まれた頃からであることを知ることができる。ここまで語られてしまったら、もうある種の才能というものかも知れぬほどの存在感。こんなにもあたたかで、やわらかに満ちた日常があるのならば、まだまだこの世界に生きる価値はあるに違いない。そんなふうに日々に疲れた大人の心を和ませる物語の数々である。対象年齢は5歳から。ちいちゃな女の子に読み聞かせてみたら、きっと素敵なレディになれるのでしょう…きっと。

 ここからは、冒頭で触れた“きかんぼ”の大人たちについて語ってゆこう。「『かがり火の夜』のプディング」に登場するおばあさんは、かがり火も花火も嫌いだというこだわりを見せ、ちいちゃいいもうとと一緒に、大イベントを無視してプディングを作る。それがもう、特別に愉快な時間で、いい雰囲気である。そして、「たいそうお年よりのたんじょう日」には、もっと“きかんぼ”な大人と云える存在の大おばあさんが登場。100歳を迎えるお祝いに、それぞれプレゼントを持ってかけつける話なのだが、この大おばあさんが素敵なのだ。少女のままの部分を残して、小さく小さく歳を重ねてきた日々を感じさせる佇まいで。やはり、このちいちゃいいもうと“きかんぼ”ぶりは血筋なのかもしれない。

 それから表題作である「おとまり」についても触れておかなくては…。遠くに住む名付け親のおばさんのもとへおとまりに行く姉を、羨ましく思ういもうと。けれど、ここでも“きかんぼ”ぶりがすごいのだ。いつもと違う絵がかかっている部屋で、いつもと違うベッドで、いつもと違うごちそうに、うちにはないピアノ。でも、それを求めて遠くまで行くのはイヤだと云うのだ。そこで周囲が思いつく、“きかんぼ”のためのおとまりメニュー。なんともあったかく、とてつもなくやわらかな眼差しを持つ人たちによる、本当に視野の広い案。このおとまりメニュー。かなり、実用性があるのではなかろうか。そういえば、3冊目にたくさん登場すると予想される、いもうとの友だちであるハリーがちらりと出てくる。ふふ。3冊目を楽しみに待とう。

4834022005おとまり―きかんぼのちいちゃいいもうと〈その2〉 (世界傑作童話シリーズ)
ドロシー・エドワーズ
福音館書店 2006-04-13

by G-Tools

もしもお気に召しましたら人気blogランキングへ…
にほんブログ村 本ブログ←素敵ブログ、いっぱい。

|

« 銃とチョコレート | トップページ | 花のようなひと »

23 酒井駒子の本」カテゴリの記事

59 海外作家の本(イギリス)」カテゴリの記事

69 アート・絵本」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

酒井駒子さんの絵って、本当に素敵ですよね。
それにしても、この本の題名。題名をきいただけで、胸がキュンとなるようです。
早速、図書館にGO!です。また(笑)。
本を選ぶときには、内容と同じくらい、装丁や挿絵、紙質にまでにも惹かれてしまう私なのでした!

投稿: こもも | 2006.06.15 20:57

こももさん、こんばんは。コメントありがとうございます!
実は、酒井駒子さんにそそられて手に取ったんですよー♪
タイトルといい、挿絵といい、語り口といい、
かなり児童書としてはオススメです。イギリスでは有名らしいですし。
あ、でも息子さんと読む場合はどうでしょう…
“きかんぼ”になっちゃう可能性大やもしれません(笑)

投稿: ましろ(こももさんへ) | 2006.06.15 21:43

あっ!私は今でも結構「きかんぼ」です。(笑)
今度の休みに図書館で探して見ます。
ニヤニヤしながら見ていると、「あっ!変な人がいます!」なんて、通報されないかな。(爆)
でも多分、ん、わかるわかる・・そのくらい「きかんぼ」のほうがよろしい。(爆)
なんて、思いながら見ることになりそうです。


投稿: 工作員 | 2006.06.16 23:40

工作員さん、コメントありがとうございます!
そうでしたか。「きかんぼ」でしたか。
わたしも少しばかり「きかんぼ」かもしれません。
それを“可愛いでしょ?”なんて語ってくれる姉でもいたらなぁ…
図書館で見つかるとよいですね。

投稿: ましろ(工作員さんへ) | 2006.06.17 23:25

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55029/10523503

この記事へのトラックバック一覧です: おとまり きかんぼのちいちゃいいもうと その2:

« 銃とチョコレート | トップページ | 花のようなひと »