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2006.05.17

神様ゲーム

20050510_006 掻き立てるミステリーは、いい。たいしてミステリーを読まぬくせに、むしろ苦手なくせに、ふいにそんなことを思う。“かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド”のうちの1冊である、麻耶雄嵩・著『神様ゲーム』(講談社)を読んで思ったのだ。このシリーズは何がいいって、ページのかどっこがまあるいこと。活字が大きくて、仮名がふってあること。そして、わかりやすい展開と、グロテスクに残酷なこと。少年少女というよりは、どう読んでも大人向きだろうよ、とツッコミたくなってしまうところも、ミステリーに縁遠いわたしを妙に掻き立てるポイントだったりする。ここまで細やかに描きながら、どうしてこっちでぼかすかなぁ…なんて思わせて、ぐいぐいと物語に引き込むのだから、なかなかあなどれない。

 このミステリー。小学4年生の主人公を含む、少年少女によって構成される浜田探偵団の5人と、自称・神様の少年と、主人公の少年の親友(浜田町ではないので、探偵団には入れない)を中心に展開する。誕生日、神様、犯人、天誅(てんちゅう)英樹、死、と進み、その後は逆流するかのように進展してゆく。つまりは、はじめの誕生日まで順に戻るわけだ。猫殺しの犯人探しから、少しずつ、でも確実にいくつもの伏線が張られ、呑まれるように読み手を物語に迷い込ませる。主人公の中にあった、ささやかな幸せ。胸に抱いたあらゆるものが、歪んで滲んで崩れゆく結末。モヤモヤと残る読後感は、はぁと息をひとつつかせるものの、悪くない。これはもしや、大人味か。

 ここでやはり語るべき登場人物は、やはりタイトルにある通り、神様についてだろう。あくまでも、自称・神様に違いないので(本物だったら、ごめんなさい。そう言ったところで、神様なら理解してくださっているハズ。ですよね?)、設定としたらすごく面白い。神様は何でも知っていて、人間というものをわざわざ不完全に創造して、そこに天誅を下すことだってできてしまう。ひとつ当たれば、すべては意味深な言葉へと変わり、問いと答えを繰り返す。それが“神様ゲーム”というものだ。このゲームは、主人公の少年の主観と自称・神様との駆け引きが続く限り、終わらない。例え、物語が結末を迎えても、終わることを知らない。読後に残るモヤは、それゆえのものなのかもしれない。

 うんうん、そうそう。そんなふうに頷いた部分もあった。少年たちが抱く、誕生日をはじめとする大イベントでの、プレゼントへの企みについてである。大人というものの思惑と子どもというものの思惑とが、あそこまで違うというのが、なんともリアルだったのだ。実用性と金銭面と。それらが重なる瞬間なんぞ、あるものか。デラックス完全版は高いのだ。したたかな子どもは計算する。誕生日と。クリスマスと。お正月と。配慮に配慮を重ねて、さりげなく欲しいということをにおわす。それがどんなに大変であるかを、いつのまにか忘れるのは、目先のモノにくらんだ大人ではないか。いつの日にも欲しいモノの類似品ばかりもらっていたわたしは、些細なそんなことに、少年たちと視線の高さを同じにしたのだった。

4062705761神様ゲーム (ミステリーランド)
麻耶 雄嵩
講談社 2005-07-07

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コメント

こちらにもTBさせていただきますねー。
ましろさんは、これが初麻耶雄嵩作品でしたか?
もしこの作品が気に入られたのなら、
「夏と冬の奏鳴曲」を読んでみて頂きたいなと思ったり。
本当はあんまり人にオススメできる作品ではないし
ましろさんに気に入ってもられる自信も全然ないのですが…
あ、そういうお薦めってかなり迷惑ですね。(笑)
でも私にとっては、同じように掻き立てるミステリーなんです。
もし機会があれば、ぜひ手に取ってみてください。
講談社文庫から出ています。

投稿: 四季 | 2006.06.28 05:22

四季さん、こちらにもコメント&TBありがとうございます!
そして、はい、まさに、初麻耶雄嵩作品でした。
オススメしてくださって、嬉しいです。
嗚呼、しかも四季さんからオススメされちゃいうと、
もう読むしかないですよー。絶対、読むっきゃないですよー♪

“ミステリという苦手ジャンルを克服せよ”
みたいな、夏休みの宿題みたいな感覚になっているわたしです。
もしや、Ciel Bleu主催の読書感想文課題図書って、
「夏と冬の奏鳴曲」なんですか…なんて。
ひとり、盛り上がってしまいました。
先生、ありがとうございました!

投稿: ましろ(四季さんへ) | 2006.06.28 15:55

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