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2006.01.23

STAR EGG 星の玉子さま

20050930_112 あたたかだけれどキュンと切なく苦しくなる、小さな星の物語である、人気ミステリィ作家・森博嗣著『STAR EGG星の玉子さま』(文藝春秋)。ミステリィは苦手ジャンルゆえ、著者の絵本は何冊か読んでいるのに、小説は一切未読。たぶん読まず嫌いなのだろう。読めばきっと、はまるのだろう。今年こそ読まねば。でも、どれから。一体何から。多方面で活躍する著者なので、かなり迷い悩むところである。“実は文章よりも絵のほうが得意”だなんていうことを知ってしまうと、不思議と顔が緩んできてしまう。けれど、そのゆるゆる感なんぞ、ページをめくり始めたらすっかりなくなってゆくのだ。そんな魅力的な1冊。

 果てない宇宙にあるいくつもの星。そこには、あたたかな夢ばかりがあるわけではない。私たちが目にする星々。そんな大きな星ではなく、ささやかに密やかに存在する極々小さな、そういう星々がここでは描かれてゆくのだ。数え切れぬ無数の星々には、その数だけどこまでも深く漂う孤独、虚しさが存在している。地球という大きな星がそうであるように。描かれる奇妙な星。例えば、老人と猫の星、三角の星、穴の空いた星、縄跳びの星、すべり台の星、トラムの走る星、吊り橋の星、お墓の星、クリスマスツリーの星、プレゼントの星…などなど。その星々の特徴はユニークで面白い。けれど、いずれの星々にどことなく感じる翳りが次第に見え始める。星の数だけ。無数に。胸の中に秘められぬほど。

 その中の少女の星。そこには、孤独を感じている少女がぽつりといる。その星を訪ねる玉子(たまこ)さんは、その孤独を理解できないでいる。一人ぼっちなこと。それは、孤独だということなのだろうか。一人ぼっち。そんな人は、あまりにこの世界に溢れているではないか。ではなぜ、孤独を感じるのか。寂しいと感じるのか。誰かがいるから、孤独を感じるのだろうか。だから寂しさを感じるのだろうか。孤独も寂しさも、誰かがいて初めてそう思うのだろうか。「あぁ、気持ち次第ってコト?」いや、それは違う。そんなのは答えじゃない。きっと違う。人は気持ち次第で変われるほど、単純にはできていない。絶対に。そんなふうに私の中で渦巻く思い。それは少女の孤独と重なりながら、迷い込んでゆく。

 最後の大きな星。もうそこには、私が目を背けたくなるものばかりが、いくつも無数に存在しているはずだ。具体的な言葉がなくても、絵の中に描かれていなくても、それはじんじんと伝わって響いてくる。今この胸にズキッとくる痛みは、私の抱えるちっぽけな、けれど深く根付く闇と混ざり合って、さらにその疼きを増してゆく。その疼きが埋められるほどの、たくさんの強い確かなもの。もしかしたら、“夢”というもの。もしかしたら“希望”というもの。抽象的な、実際には手で掴むことのできないそれらが、私たちの或いは私の本当に求めるものを導いてくれるのだろうか。自らが為せるいくつもの方法で、求めるものを、この手にしたいものを、少しずつ確かにしてゆきたい。そんな思いを刺激する物語である。

4163235507STAR EGG 星の玉子さま
森 博嗣
文藝春秋 2004-11-03

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» 「STAR EGG ~星の玉子さま」 森博嗣[作・画] [モンキーターン]
宇宙には,沢山の孤独と,沢山の夢がある―― 人気ミステリィ作家,森博嗣が初めて自ら描いた絵本. [続きを読む]

受信: 2006.01.25 19:49

» 星の玉子さま [森博嗣] [+ ChiekoaLibrary +]
STAR EGG 星の玉子さま森 博嗣文藝春秋 2004-11-03 誰もいない星、ふたごの星、野球少年の星、孤独な少女の星。いろいろな星を訪ねて宇宙を旅する、玉子さんと愛犬ジュペリの物語です。 あの森博嗣さんが!絵本を!というわけで手にとってみました。 絵も森さんが書かれているのですが、これがまた上手!というか、ほんとうにかわいくてステキなのです。びっくりしました!(スイマセン。) 巻末には、それぞれの星についての「解説」がついています。そこまで読むと「やっぱり森さんらしいなぁ」... [続きを読む]

受信: 2006.01.26 17:52

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