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2006.01.07

本と女の子

20051026_44026 永遠に女の子であり続けたい人。女の子的なものを愛おしく思っている人。かつて文学少女だったことを懐かしむ人。私のようにまだまだ乙女であると名乗っている人。そういう人たちの心をチクリと刺激し、魅了する本が、近代ナリコ著『本と女の子 おもいでの1960-1970年代』(河出書房新社)。そのタイトルと表紙の写真だけで心を掴まれ、読みかけの小説をほったらかしにして一気に読み耽り、じーっと眺めた1冊である。本への恋しくも狂おしい想いをひしひしと感じながら、時代が変わり流れても残ってゆくものについて思いをめぐらせることができる。それらがカタチあるものばかりではなく、人の内にある目に見えない感覚の中に埋もれていることに気づかされる。

 タイトルにもあるように、中心となるのは1960年代と1970年代。その当時、女の子たちに向けて作られていた書籍についての文化的背景、出版に携わった人々のインタビュー、今となっては珍しい古書の数々などを紹介している。現サンリオである山梨シルクセンターの思わず集めたくなる小さな絵本、寺山修司&宇野亜喜良によるコラボレーションが人気の新書館フォア・レディース・シリーズ、内藤ルネによる少女の夢を実現したインテリアのアイディアが詰まった雑誌「私の部屋」、澁澤龍彦が連載を持っていたことで注目されていた「新婦人」という、4つの女の子のための書籍が並ぶ。素敵。もうあまりに素敵すぎて、女の子の沼に溺れそう。自分が女の子でよかったと思える瞬間がいっぱいである。

 中でも特に注目したのは、新書館フォア・レディース・シリーズについて。このシリーズは3冊セットで1部復刊されているのだけれど、女の子が喜びそうな物語展開がとてつもなく魅力的。寺山修司をはじめ作家陣の文章は、少女の揺れ動く乙女な部分にじっとりまったり寄り添っているのだ。可愛らしい部分よりも、残酷さや翳りを中心に描かれているというのが実にニクイ。多くの装丁や表紙、絵を担当しているのが宇野亜喜良というのも魅力。そして、読者である女の子たちの多くの投稿作品を本にしているということや、そこから新たな若い作家が誕生したことは、文学少女たちの夢を広げていたのだろう。私の知っている少女小説の流行った時代とは、異なる雰囲気が漂っているように思う。

 女の子に向けて作られたものというのは、今もたくさんありふれているけれど、ファッションと文学とが溶け合っているものはとても少ないように思う。ビジュアルとしても活字としても楽しめるもの。性別がボーダレスになればなるほど、そういうものの魅力は薄れてしまう。女の子と男の子は、そもそも根本として横たわるものが違うのだから。少女漫画を読む男の子はいるけれども、感じている部分はぴったりとは重ならないはず(稀に重なる方もいるけれど)。もちろん、提供する側の中には女性ばかりじゃなく、男性がいる。でも、インタビューを読んでいると、女の子が求めるものを確かに感じてカタチとして見せてくれたのは、やっぱり女の子だったんじゃないか。そう思えてならない。

4309727476本と女の子 おもいでの1960-70年代 (らんぷの本)
近代 ナリコ
河出書房新社 2005-12-02

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コメント

お久しぶりです。
ましろさんのブログを見ていると、懐かしい気分になります。
なんでだろ?と思ってたらわかった!
本のセレクトといい、猫のかわいいイラストといい、色といい、レトロだから。かな、と。
この記事に触発されて本と女の子読みました。
面白かったです♪

投稿: sonatine | 2006.01.25 16:09

わぁ、読まれましたか!なかなかよいでしょ、この本。
女の子の乙女心をぎゅっと掴むような。

自分のブログが“レトロ”と感じてもらえるのは、かなり嬉しいです!
そういうものが好きなのに、今イチ満足して納得いくものに近づけなくて。
もっともっと精進致しまする。

投稿: ましろ(sonatineさんへ) | 2006.01.25 17:19

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「本と女の子   おもいでの1960-70年代」    近代 ナリコ:著    河出書房新社/2005.12.2/1600円 1960年代から70年代にかけて女の子の夢と憧れを 詰めこんだ本や雑誌たちをテーマにお届けする、 古本ヴァラエティ。 ●水森亜土や田村セツコのちいさな... [続きを読む]

受信: 2006.03.22 21:12

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