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2005.12.08

テースト・オブ・苦虫1

20041017_029 これはエッセイなのか小説なのか。分類に困る、或いは分類などいらない、そういう本なのだろうという結論に至ったのだけれど、やはり私としたら小説の部類に入れてしまいたい。だって、図書館の棚で小説に分類されていたことだし、そう認識しつつ読んだのであるから。けれど、自分の出した答えに自信がないものだから、そもそもエッセイってどんなものだっただろうと辞書まで引いてしまったのは、町田康著『テースト・オブ・苦虫1』(中央公論新社)を読んだゆえ。“思うままを筆にまかせて書いた文章…”なんていう意味であることを確認してみれば、これはまさにエッセイではないかと結論は揺れる。いや、これはエッセイじゃなくて、随筆という言葉を用いた方がしっくりくるのではないか。迷いに迷って、結論はただ曖昧になっただけ。

 さて、内容。40もの話を収録しているため、読み終えた時点で頭に残っているものだけについて記す。「卑屈得。世紀寒」について。駅の券売機の行列に並ぶ男の話である。自分の番がきてからいそいそと路線図を見上げて料金を確認している者たちを見下し、いやあ俺はとっくに料金は確認して小銭を手に握り、自分の番がきたらスマートにスピーディーに切符を買うぜぃ、なんて思っている男内面が描かれている。そこへ割り込みのおばさんが登場し、男の余裕ある行動の流れを乱してしまうのだ。おばさんはさておき、この男、実に気が小さい。誰かさんみたいに。誰かさんっていうのは、あの人に決まっているでしょう?私じゃないって。そう、その人その人。だから私じゃないってば。

 そう、もう別に混み合っていないレジでも、飲み物の販売機でもきっかり小銭を用意しちゃうもの。毎回お茶って決めていないと、販売機の前で格好悪くしばし迷ってしまうでしょう?通りがかりの人が“あの人、きっと優柔不断なんだよ”なんて思わないようにしなくちゃいけないわけ。既に用意していた手の中の小銭は、もちろん汗でぐちょぐちょ。まあ機械相手なら、それはあまり気にする必要はないから気楽でいいのね。でも、万が一のことがあるから、ボタンは強めに押すことを忘れない。で、問題なのが取り出し口。結構コツがいるのよ、流れるようにスムーズに取り出すのは難しいわ。“買えた”という喜びに油断してしまうのかしら。次こそはうまくやるわよ。

 夢中になって、字数がオーバーしてしまった。いけないいけない。A4サイズ1枚分って決めているのに。読み終えて2日経てば、冷静にこの本について書けるんじゃないかと思っていたのに。苦虫についての思いだとか、細かいこだわりが散りばめられた話についてだとか。粋な話、知らない人や知らない場所が苦手な男の話、「やりたいこと」と「やりたくないこと」との見事な一致について、地球へのやさしさの矛盾の話、グローバル化について…などなど、書くことがあり過ぎて語り尽くせない。字数については、私のブログポリシーだから譲れないのだ。これもまた、苦い話の1つ。ということで、おしまい。

4120033341テースト・オブ・苦虫〈1〉
町田 康
中央公論新社 2002-11

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» 再掲 ◎◎「テースト・オブ・苦虫」 町田康 中央公論新社 1700円 2002/11 [「本のことども」by聖月]
めんどくせー、町田康の紹介、って、真似してやらーな、ウッシッシ。 「日本語の面倒、自分は私はこう思う」 文責 聖月 いやね、この題名、やっぱ考えちゃうんだよねえ、君たち大衆と違って、いろいろとさ。多分、君たちの中で一番だめな部類の痴れ人は、テーストの意味も、オブのいわんとするところの用法もわからんだろうし、苦虫をクチュウなどと読んで、わあ、カワイイというのだろうねえ、知らんけど。まあ、評者は文化人だからして、苦虫の味ねえ、そりゃ苦いね、と考えるにとどまらず、と考えるにとどまらず、と考え... [続きを読む]

受信: 2005.12.09 22:30

» 「テースト・オブ・苦虫」 町田康 [「札幌タイムス」北国支局]
 おもしろい。  「コピー&ペーストによる繰り返し芸」は、使えるのではないか。  (金子勝利) [続きを読む]

受信: 2005.12.10 22:34

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