« テースト・オブ・苦虫1 | トップページ | 闇のなかの赤い馬 »

2005.12.10

猫語の教科書

20050618_022 猫の、猫による、猫のための本である、ポール・ギャリコ著、灰島かり訳『猫語の教科書』(ちくま文庫)を読了。著者の友人である編集者の元に届けられた原稿。それは、どうやら猫がタイプしたものらしい。奇妙に文字と記号が入り混じった暗号めいた文章を解読したのが、この本である…という設定で書かれたのが本書。嘘ぉ、そんなわけないよぉと疑う人よ、待て待て待って。この本には、証拠が付いているのだ。推測の域を出ないものの、ツィツァという猫がタイプライターを打ち、無邪気ながらも確信を得た表情でこちらを向き、鳴き声が聞こえんばかりに牙を見せ、優雅であり美しくもあるフォームでジャンプし、愛らしい雰囲気を放ちながら飼い主の傍に寄り添っている様子が。それをどう受け取るかは貴方次第。私次第というわけ。

 この本を読みながら一番に思ったのは、猫がいかに賢い生き物であるかということ。私は相当な猫狂いであるから、ごく一般的な人間よりは猫に対して贔屓目があるにしろ、それについては深く強く思うところがある。例えば、妖しく気品ある鋭いあの目。光を浴びると、それは澄みきって果てしない遥か向こうを見ているよう。私の方を向いているようで、僅かに視線をずらしつつ、実は私の心の奥底まで見透かしているようでもある。そんな目を持ちながら、夜になると愛らしさ倍増のまあるい大きな目を見せる。まるで、何も深く考えていないみたいに。それのどこが賢いんだ?と思うかもしれない。私にとっては猫という存在自体が、“賢さ”みたいなものなのだ。威張ることじゃないけれど。

 猫がこの本の中で語っているのは、若い未熟な猫への人生のアドバイスである。具体的には、いかにしていい暮らしと家、カモとなる人間を見つけるか。猫ができる、その計算し尽くされた媚びをいかにして自由自在に使いこなすか、である。こういうことを書くと、“猫のクセに馬鹿にしやがって”なんて思う人が出てくるかもしれないが、そう人というのは根本的に猫好きではないのだろうと私は判断する。だって、そもそも猫好きな人間というのは、猫様々なわけで、猫の尻に喜んで敷かれたがっているのだから。猫が一言ニャーと鳴けば、どうしたの?何か欲しいの?どこか痛いの?一体何があったにゃ?とすぐに反応してしまうのだ。これこそ真の猫好きではないのか。

 そして、この本のいいところ。それは、人間を思うままに支配するだけに留まっていないところだろう。いくら猫が人間よりも賢さが上回っていようとも、やはりそこは関係性。それは、愛情なくして成立しないのである。絶対的な信頼とまではいかないにしろ、思い合うこと、寄り添うこと、というのは大事なポイントである。人間という生き物は狡いもので、一方的に思いを注ぎ続けることができない。見返りを欲しがる生き物なのである。そんな部分についても猫はちゃんと理解していて、人間を満足させる術を快くこの本で伝授する。その思惑を知りながらも、人間は愚かな生き物でもあるから、その行為を歓喜の声とともに受け入れてしまうのである。私もまた、そんな生き物の1例であり、猫に日々教育されて生きているわけである。

4480034404猫語の教科書 (ちくま文庫)
Paul Gallico 灰島 かり
筑摩書房 1998-12

by G-Tools

もしもお気に召しましたら人気blogランキングへ…
にほんブログ村 本ブログ←素敵ブログ、見つけた!

|

« テースト・オブ・苦虫1 | トップページ | 闇のなかの赤い馬 »

58 海外作家の本(アメリカ)」カテゴリの記事

71 猫の本」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

猫語の教科書ですか、なかなか楽しそうな本ですね。
私は飼い猫がたまに何を言ってるか解る時がありますよ、でも会話にまではなっていないんですけど、、、
それはそれで良いトコなのですが。

投稿: ハンガン | 2005.12.11 07:04

ハンガンさん、コメントありがとうございます。
猫語解るのですかぁー!スゴイ~!
会話ができたら、もう完璧ですね。
どうぞ極めてください。私も負けずに修行致します(笑)。

投稿: ましろ(ハンガンさんへ) | 2005.12.11 14:44

こんばんは☆

僕も以前、ニャンコを飼っていたことがあります。その頃の話ですが、上の方が書いているように、やはり僕もニャンコの言葉がわかることがよくありました。ワンコも賢いですけど、言葉のわかりやすさではニャンコのほうが上ではないかと・・・。

まあ、これは僕の個人的な経験ですけどね。

投稿: デミアン | 2005.12.11 20:41

コメントありがとうございます!
デミアンさんもわかるのですかぁ…さすがです(笑)
私はどうも一方通行な気がしてしまって。
佐野洋子さんの『あっちの女 こっちの猫』に続いて、この『猫語の教科書』ですから。自信喪失です。
うちのワンコはわかりやすいゆえ(おばかだともいう)、もどかしさ倍増してます。

投稿: ましろ(デミアンさんへ) | 2005.12.11 21:15

ましろさん、初めまして、こんにちは!

こちらもTBさせていただきました!m(__)m

猫の本、私が読んでいないものが多いので、参考にさせていただきます(^_^)
猫の写真も綺麗ですね!

>猫の尻に喜んで敷かれたがっているのだから
その通りです(笑) 猫が、良くないことをして叱った後でも、ついご機嫌取りに行ってしまうワタシ。

猫3犬1なんですね! うちは猫4+保護猫1です~。
保護は、迷い猫で保護したんですが飼い主さん見つからず・・・です。

投稿: みぃ | 2005.12.12 11:42

みぃさん、コメント&TBありがとうございます!
来てくださって、とっても嬉しいです。

猫4+保護猫1ですかぁ。すごいです。
猫3匹でも結構大変なので、いろいろご苦労があるんじゃないかしらと思ってしまいます。猫をひと目見たら、そんなことは吹き飛んじゃうんですけどね(笑)

飼い主さん探しは難しいですよね。どうか見つかって欲しい!
実は私もかつて飼い主さんを探したことがありまして、
ネットや新聞に載せてみたものの結局見つからず、今に至っております。
実際にそういうことをするまでは、簡単に済むものだと思っていたので、
人生の厳しさを知ったような…。今は立派な我が家の一員です。

投稿: ましろ(みぃさんへ) | 2005.12.12 21:27

ましろさん、こんにちは~。TBさせて頂きました。
ましろさんと読んでる本が重なることってあまり多くないのに
「闇のなかの赤い馬」も「アビシニアン」も読んでるんですよ!
でもブログを始める前なので記事がなくて残念~。

「猫語の教科書」いいですよね。
犬は長年飼ってたんですが、猫歴はまだ半年、
まだまだ初心者の私です。でも賢さは十分認識してます♪
私も猫語が分かるようになりたいな~。

投稿: 四季 | 2005.12.13 16:32

四季さん、コメント&TBありがとうございます!
読んでいる本が重なると、密やかにウキウキしちゃいます。
やっぱりたくさん読んでらっしゃる~!
ポール・ギャリコ作品は結構挫折していまして、読めるかどうか自信がなかったり…
この本が読めて、ほっとしております。
四季さんのところで他のポール・ギャリコ作品を見かけて、
すごく興味があるんですけれど、なかなか手が出ず。

もう半年ですか。四季さんの猫ちゃん、大きくなったかなぁ?
またいつか載せてください!なんて思いつつ。

投稿: ましろ(四季さんへ) | 2005.12.14 17:01

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55029/7556273

この記事へのトラックバック一覧です: 猫語の教科書:

» 猫のネタ [ネタ蔵]
猫のネタを毎日ネットから集めてブログ形式でお届け中。ブログや飲み会でのネタを見つける為に利用してください。「○○のネタ欲しい!」とキーワードのご提案もお気軽にどうぞ!お待ちしてます。... [続きを読む]

受信: 2005.12.10 21:18

» 『猫語の教科書』 ポール・ギャリコ/筑摩書房 [Mie'S Book Room]
猫語の教科書 ポール・ギャリコ著 / 灰島 かり訳 ある日ある人物のところに届いた謎の暗号のような原稿の束。暗号を解いてみると、どうも猫が書いたものだと判る。 ツィツァという猫が書いた、子猫・のら猫・捨て猫などの猫のための教本。 人間の家をのっとる方法、魅惑の表情のつくり方など、人間にをとりこにするための猫の教科書! ノンフィクションに分類しましたが、猫が書いたかどうかという真偽はともかくw 内容は、猫だけでなく人間が読んでも勉強になるもの(笑) これを読んで、「ああ、うち... [続きを読む]

受信: 2005.12.12 11:34

» 「猫語の教科書」ポール・ギャリコ [Ciel Bleu]
 [amazon] [bk1] ある朝、とある編集者の家に届けられていたのは、"??YE SUK@NT MUWOQ"などという文字と記号が入り混じった文章の不思... [続きを読む]

受信: 2005.12.13 16:27

» 「猫語の教科書」ポール・ギャリコ [Ciel Bleu]
 [amazon] [bk1] ある朝、とある編集者の家に届けられていたのは、"??YE SUK@NT MUWOQ"などという文字と記号が入り混じった文章の不思... [続きを読む]

受信: 2007.07.13 13:25

« テースト・オブ・苦虫1 | トップページ | 闇のなかの赤い馬 »