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2005.11.25

虹の獄、桜の獄

20041121_031 幻想。闇。別世界。その奇妙な悲痛に、するすると呑み込まれてゆく不思議な心地よさ。奥底に横たわる罪と罰に悩み惑いながら、時間を忘れて浸りきってしまった、竹本健治・著、建石修志・画による『虹の獄、桜の獄』(河出書房新社)。1991年に発表された「七色の犯罪のための絵本」という色に纏わる7つの暗黒童話と、書き下ろしの「しあわせな死の桜」を収録。読み終えるまでは普段手に取らないタイプの本だと思っていたけれど、読み終えてみたら物語もその世界を深める画も魅力的に思えた。著者の作品は初めてなのでどんな作風なのか気になるところなのだが、この作品を読んだ今時点では文体も描かれる世界観もかなり好みのよう。他の作品にも興味津々。

 「七色の犯罪のための絵本」では、赤、黒、銀、白、青、緑、紫色の物語が展開。どれも色鮮やか。中でも「白の凝視」が印象深い。ゆったりと、けれどじわじわと進む物語を見つめ続ける少年の存在と、取り憑かれたようにピアノを弾き続ける少女の姿が頭からいつまでも離れない。少女の異変になかなか気づかずにのんびり構えている両親に苛立ちつつ、途切れることなく続くピアノの音色と少女の中で刻み続けるリズムがこびりつく。それが荒々しくなるほどに、狂おしくなるほどに強く惹きつけられる。悪い夢のような結末は、あまりにも美しく悲痛である。痛ましい光景が、物語でよかった。

 もうひとつ挙げるのは、緑色の物語「緑の沼の底には」。次々と失踪者が出る村。闇の中に光が揺らめく沼付近には、ささやかな痕跡が残される。事故なのか。誰かの仕業なのか。一体なぜ。何のために。悲しい物語のはずなのに、浮かんでくる想像を覆すような展開が面白い。失踪者が出たと知り、真っ先に沼に向かったのは2人の人物。強い目眩と凍てつくような恐怖の先にあるものを知ったとき、物語は新たな展開を紡ぎ出すのだろうか。自分自身に対する怯えを感じたとき、狂おしいくらいに美しいものに気づくのだろうか。それらの疑問や足首に絡みついてくる何かに、引き込まれないようにしなくては。

 書き下ろし作品の「しあわせな死の桜」は、“ハンサム探偵団”なる自意識過剰で微妙なネーミングの少年たちの幻想的な事件簿。挑むのは“神隠し”という呼称がぴったりな不思議な蒸発事件。警察よりも情報収集力と行動力があるのはなぜなのかとか、どうして重要な証拠を少年が持っているのかとか、そういう細かい部分に拘ってしまうミステリ好きには向かない物語だけれど、少年たちのキャラクターはなかなか個性的に設定されている。妖しくも美しい光景に包まれて、無数の罰が降ってくる様子は圧巻。ふっと現実に戻ったときのしーんとした静けさが何とも心地よい。これはもう、桜の季節が待ち遠しくなる。

4309017347虹の獄、桜の獄
建石 修志
河出書房新社 2005-10-15

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