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2005.10.27

ペロー残酷童話集

20051026_222027 グリムなら知っているけれど、ペローって?そんな私のような人に最適であろう本、シャルル・ペロー、澁澤龍彦著『ペロー残酷童話集』(パサージュ叢書)。子供の頃から慣れ親しんできた童話の冷血な部分にスポットを当て、そこに見えてくる真実をエロティックな解釈で読ませる。姑の嫁いびりの物語である「眠れる森の美女」、幼児虐待の物語である「親指太郎」、少女殺しの物語である「赤頭巾ちゃん」、夫の妻への虐待の物語である「青髯」を収録。合わせて、澁澤龍彦氏による、精神分析的な様々なペロー童話の解釈が紹介されている。巻末にある桐生操さんによるエッセイには、ペローの童話の書かれた背景やグリム童話との違い、ペローが抱えていたコンプレックスについて説明されている。

 ペローの童話を読むとき、精神分析的な解釈を知った上で読むと、物語の存在がぐっと変わってくる。物語に登場する小物にも、設定にも、展開にも、ありとあらゆるものが性的なものとしての説明がつくらしい。少々強引さもありつつ。もちろん、人間の本質的なものとしても解釈できる。長い年月を経て残ってゆく物語は、生々しい真実を秘めながら夢のようなロマンティックな姿で、小さな子供やその母親を惹きつけてゆくのである。無意識のうちに心に刻まれた物語は、私たちの根本である気がしてならない。ペローの物語に隠された教訓を読みながら、きっと多くの人たちがそう思うのではないだろうか。

 エロティック・シンボリズムの章に、心理学者マリー・ボナパルトのエロティックな観点から見た猫について書かれた箇所がある。毛並みの美しさ、体温の温かさ、撫でられるとゴロゴロと喉を鳴らすこと、手を触れると興奮して毛を逆立てること、媚態を示すことなどなど…この妖しい魅力を持つ獣に心奪われている私は、その視点がとても興味深かった。ポオの『黒猫』に対するマリー・ボナパルトの解釈は、あえて此処には書かないことにするが、あっと驚くようなものであることのみ記しておこう。黒猫に象徴されるものが一体何であるのか。黒猫が吊されて殺されたことの意味する真実が何であるのか。一人胸にしまっておく。

 さて、ペローの童話「赤頭巾ちゃん」について。この物語に対して私が抱いていたのは、赤頭巾のぶりっこぶりとお馬鹿ぶり。どう見ても狼だろうおばあさんに、“おばあさんの目は、どうしてそんなに大きいの?”などと言うだろうか。おばあさんの声がどんなかも知らずに、よくもおばあさんを慕う娘をきどっていられるなぁ…とか。要するに、私は赤頭巾が嫌いだったのだ。ペローの物語では、赤頭巾はハッピーエンドで終わらない。とことんまで冷血で残酷なままである。成熟しきっていないであろう赤頭巾は、無防備に危険なものと関わる。自分から服を脱ぐ。それはやはり、ぶりっこでお馬鹿だからなのだろうか。はて。

4839830096ペロー残酷童話集 (パサージュ叢書―知恵の小径)
シャルル・ペロー
メタローグ 1999-07

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コメント

こんにちは!この本、河出文庫『長靴をはいた猫』とどう違うんだろうかと、収録作品一覧をクリック。
ペロー童話を読み解くためのエッセイが収録されているんですね。
そうと知って、興味津々になった私です。
毒を抜かれて腑抜けになる前の、残酷な童話の方が好きです。
「赤頭巾ちゃん」も、しかり(笑)。
ただこの物語を処女がうんぬんと精神分析されるのは、味気ないなあとは思いますけど。

投稿: 七生子 | 2005.10.27 12:28

七生子さん、コメントありがとうございます!
そうなんです。桐生操さんのエッセイと高丘卓さんの解説以外は、他の作品でも読めるみたいです。
精神分析的な解釈は、これでもかというくらいたくさんの方が登場。
正直、難しくてイマイチ理解できませんでしたが…(笑)
このパサージュ叢書は、ちょっとだけ小ぶりで手に馴染みやすいのがよいですよ。

投稿: ましろ(七生子さんへ) | 2005.10.27 22:19

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